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ビューティフル・デイのmasayaanのレビュー・感想・評価

ビューティフル・デイ(2017年製作の映画)
3.5
決して詳細には語られないが、アダルト・チルドレンとして、そして元軍人として、二重のトラウマを抱える殺し屋の男と、強制的な未成年売春で生気を失ってしまった女の子。男にできることと言えば、自らに痛みを与えて「死」を自分の傍に置いておくことだけだし、彼女にできることといえば、(おそらくは世界中の売られた少女たちがそうしたように)この苦痛が少しでも早く終わってくれるようにと時を数えることだけだ。

と書くと、いかにも壮絶なテーマであるかのように見えるし実際にそうなのだが、しかし、暴力をどこまでも許容する(してしまう)現代映画において、そうした題材はどれもありふれているとい言えばありふれている。あえて言えば、題材の「大きさ」にどこまで映画が伴っただろうか。とは言え、そうした過去の/現在の苦痛と向き合い、付き合い、どうにか抗うところを映画にして欲しかった・・・などと戯言を吐くのは、それこそ「映画」の見過ぎなのだろう。

そう、人はそんなに簡単に困難を乗り越えたり、痛みを受け入れたりすることはできない。90分の映画では、せいぜい、そこからの逃走を試みるくらいだろう。まさしく裸足で逃げる、だ。そういった意味では必要以上のことを一切語らなかったとう点で「正しい」作品ではあったか。ただし、人気ロック・バンドの人のサウンドトラックはいささか演出過多。タイミングよく『サイコ』が引かれているのは驚いた。先にコメントした『ローリング・ストーン』の年代ベストで34位。
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