ハネケがそうなら俺はこうだと、蔓延するスマホ依存型社会に警鐘を鳴らす。電源が入らず電波も届かなければ、人間とはなんと儚い存在なのか。私は彼を知らないし、彼も私を知らない、パスワード一つ解けやしない、侵入不可能の鉄壁の帝国がそこには存在している。愛なき世界にも子は生まれようが、育つ事は許されない無いのかもしれない、だがしかし、それがこの悪しき社会に終止符を打つ最終手段なのだとすれば、それもまた致し方無しか。見つからなかったのか、見つけなかったのか、帰らなかったのか、はたまた逃げ出したのか、携帯電話は見つかれど最後まで答えすら出ずに。「LOVELESS」と言われれば真っ先にMy Bloody Valentineが浮かんでしまう訳だが、この映画には人としての血が通っておらず、体温も無ければ色も無い、淡いピンク色では無く、ただ冷たい雪の白ばかりが目につく、映し出されているのは現実の影だけだ。俺がこの作品の配給・宣伝担当者なのだとしたら、真っ先に江口洋介にコメントを求めに行く、かつて「そこに愛はあるのかい?」とのり◯ーに訪ねた彼は、この作品を観てなんと言うだろうか。あんちゃん、残念ながらこの一つ屋根の下には、愛のカケラはこれっぽっちも無かったよ、哀しみのダムは、虚しさを募らせ決壊に至る。さようなら子供たち、来世はどうか、愛ある世界、愛ある時代に産まれてきておくれ、そんな物は、実現不可能かもしれないが。