アタフ

ラブレスのアタフのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.4
舞台は冬のロシア、画面から強烈な寒さが伝わってくる。寒い。とても寒い。だがこの映画で一番寒くて冷たいのは人間の心。両親の子供に対する冷たさ、愛の無さが見ていて本当に辛い…

子供にとって、両親が子供の押し付け合いで喧嘩しているのを聞いてしまうことほど辛いことはないだろう。その喧嘩を聞いてしまったアレクセイ少年の泣き顔は忘れがたい。

失踪した子供を探す展開ともなれば、両親は子供のことを心配し、葛藤し、悩むのが普通だと思うが、この母親は「子供を産まなければよかった」「人生の選択を間違えた」「夫に騙された」など自分勝手なことばかりをのたまう。母親としての責任なんぞ一ミリも考えない最低な母親だ。父親はというと不倫相手とのセックスにいそしみ、捜索はするもののどこか他人事で必死さが感じられない。子供を持つ親とは思えない態度に不快度は増していく。

また映画の特徴としても、ストーリーをエモーショナルに魅せるようなことは全くせず、両親の行動を淡々と映すのみ。この撮り方はちょっとミヒャエル・ハネケ的だとも思いました。ラジオやテレビで流れる世界情勢でなにかを伝えようとする手法も似ていると感じた。

こんな両親は現実には居ないと思いたいが、ニュースを見ていると世の中にはこんな家庭はごまんとあるのでしょう。その事実はとても悲しいです。恐ろしく冷たく寒い不愉快な映画なので、冬が終わり春になった今見る映画ではなかったかも…
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