安堵霊タラコフスキー

ラブレスの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.1
予告の時点で察してはいたのだけど、雪の降る場面が結構あったりマンションや部屋で大半のシーンが繰り広げられたりと案の定キシェロフスキのデカローグの一編みたいな内容になってたが、倍の時間がかかっているにもかかわらずデカローグほど映像が魅力的じゃなかったせいで結構退屈だった。

近頃のズビャギンツェフはデカローグの頃のキシェロフスキが成瀬とキューブリックを合わせたような撮り方で作っている風に見えるのだけど、キューブリック的映像の質感はともかく成瀬みたいな堅実すぎる演出は映像を単なる情報に仕立て上げてしまうから、見ていて何も感慨が湧かなくて困る。

という具合に基本的にそこまで面白い映画でなかったものの、少しは映像的にも面白味のあるシーンがあり、例えば冒頭の工場の出口みたいな小学校の校門やスマホを使った現代人への皮肉的な描写、もっと長々映してほしかったタルコフスキーの映画に出てきそうな廃墟の風景等は中々好みだったし、ラストもそこに映るとあるものの正体が映画を見てきた観客にだけわかる作りになっていたところに哀愁と映画の妙を感じさせるものがあって良かった。

あと邦題が英題と同じになるケースはよくあるけれども、今回ばかりはED曲が無駄に良いBLアニメと名前が被るから避けてほしかった。