【計算され尽くした演出に脱帽】
この映画、すごいです。
少年、母親、父親…とにかく登場する人物の心理描写がものすごく繊細。言葉だけじゃないところ(むしろ言葉少なめ)で、気持ちを語ってくる。今、この空間で起こってることの全てを言葉以外(カメラの構図とか視線、仕草)で語ってくる。言葉にしないから陳腐にならない。すごく好き。
*少年
オープニングから「孤独」な存在であることの象徴が散りばめられている。森の中で自分だけの目印をつけたのは、きっと「待ち合わせ」のつもりだったんだろう。今日はここにいるよ、明日はここで待ってるね。そうやって少年は一人で森の中で空想の人物をモノに置き換え、待ち合わせをしてたんだと思う。誰も待ってないあの家にいるよりも、森の中で待ち合わせしたほうが楽しいもんね。哀しい一人遊び。
家でも息を殺して涙をながし、こらえきれない涙は肘をついて溢れる涙を隠し切る。愛のある母親ならすくにでも気付きそうなものなのに、自分の母親は案の定気付かない。それがまた悲しさに拍車をかける。
少年の出番は少なめだけど、少しの登場で深く印象に残る演技をするから、これからの出演作も楽しみ。
*夫婦
夫婦の描き方が絶妙なバランスで対比をさせていてこの監督はすごいと思った。
例えば、お互いがパートナーに不満に思っていることを、次のパートナーで補おうとしてるところ。妻は包容力を求めて年上彼氏を作り、夫は素直さを求めて年下彼女を作る。
別れが決まっている夫婦はどちらも性格が悪くて、どちらも外面だけはいい。下手に夫妻のどちらに肩入れすることなく「どっちもどっちだなー(´・ω・`)」て思えるから観客に救いがある。片方がまだ愛情残ってたらむしろ哀しいし。
この人たちの性格の相性の悪さが、観てるうちにどんどん理解できて「奥さんが苛立つのも分かる」し、「旦那さんが苛立つのも分かる」ようなさりげない演出が好き。
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久しぶりに人物描写や状況描写が繊細な作品に出会えた。少年のことを思うと胸が締め付けられるけど、作品の作り方がすごく好き。