Iri17

ラブレスのIri17のレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
5.0
衝撃的な作品。タルコフスキーの『サクリファイス』や『ストーカー』、『鏡』を換骨奪胎し、プーチン、ロシア正教批判も含め、普遍的な愛についての作品。

離婚直前の夫婦がお互いに息子を押し付け合う。その口喧嘩をドア越しに聞いている息子は声を出さないように必死になりながら号泣している。そして息子は失踪してしまう。それでも夫婦は自分のことしか考えていない。父は仕事のこと、母は自分の美貌にしか興味がなく、2人は息子がいなくなっても息子に興味がないのだ。
これはウクライナを思い出させる。劇中のニュースでも流れているように、2014年にロシアはウクライナを侵略した。ウクライナの内政に干渉し、ウクライナ人を殺しても、ロシアは気にかけない。プーチンの操るナショナリズム=自己愛しか今のロシアにはないからだ。

母が息子に吐くセリフで「ごちそうさまは?」って字幕があるが、Спасибоって言ってる。これはありがとうの意味で、母が息子に強制したのは、生き物や生産者に感謝しろじゃなくて、用意してやったんだから感謝しろって感じ。本当に嫌な親だな。
ズビャギンツェフ監督の『裁かれるのは善人のみ』の父親も傲慢で保守的な男だった。ズビャギンツェフ監督の父親像っていうのがそうなのかもしれない。

息子の失踪の真実は結局あいまいに終わるが、ある一つの真相が示唆される。集中して観ていると気付くかもしれない。この辺もすごく面白かった。

本当に引き込まれた。素晴らしい作品だった。