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ラブレスのいののレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.7


辛い映画だった。罵り合う姿に、耳をふさぎたくなった。愛を受けず、愛を知らずに育った娘には、大人になっても愛を知る機会は訪れなかった。そのことの不幸。他者にまるごと愛された経験を持たぬ者。他者にまるごと愛されないことの満たされなさ。そして何より、それがこの映画の主人公にとどまる話ではすまないことの寒々しさ。目の前の人物は私を肯定してくれない。私を全力で否定する。しかし、スマホの画面の向こう側の世界は、私を否定しない。肯定してくれるわけではないけど、否定はされないから、満たされもしないけど、でも満たされたくて、画面をのぞき込む。孤独を見つめないために画面を見つめる。


後半は、罵倒する声はぐっと減って、沈黙が覆う。でも、前半の罵倒ですっかり消耗しているアタシは、後半の沈黙のなかでもずっと罵倒され続けているように感じてしまう。


愛はなくても、節度は保ちたい。愛はなくても、穏やかには生きたい。アタシたちは、愛を求めるよりもまず、それを手に入れようと努力したらどうだろうか。それは難しいことだろうか。


テレビからは、ウクライナ侵攻のニュースが流れる。それを他人事で眺める姿は、少なくともアタシとは同じである。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という宮澤賢治の言葉を、アタシは一瞬思い出し、思い出したことを自らの免罪符にして、その横でアタシは、不毛に終わるであろう愛を育んでみようと試みるのだ。木の枝で揺れているビニールかなにかの紐は、僕はここにいるよと言っているかのようであり、何年経っても揺れている。