あんじょーら

ラブレスのあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

ラブレス(2017年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

2018年見逃した後追い作品その4。


うん、分かるよ、アンドレイ・ズギャビンツェフ!なんかダークな感じにしたいんだよね。うん、深みを感じてくれる人から評価して貰えそうだし、批評家受けイイもんね。


しかもベルイマンの『ある結婚の風景』と対になる作品にしたかった(Wikipedia情報を信じるなら)のも良く分かる。アレ、イイドラマだもんね、ベルイマンの母国スウェーデンでのドラマ放送後の離婚率急激に上げたらしいしね、インパクトあるよね。



男女のすれ違いも、誰しも経験あるだろうし、共感されやすいよね。うん、意図も理解出来ると思うし、テーマも『ある結婚の風景』と同じだし、でも子供の扱いがかなり違って新鮮でさえあるよね。



でもね、確かに悪くないけど、上手くもないと感じてしまった…いや、『ある結婚の風景』とは尺が違いすぎるから対にしようとするのはそもそも間違いじゃない?映画で2時間程度では無理。しかもほぼほぼ会話劇で4時間越えのドラマに対して2時間程度ではちょっと無理。まるまる4時間越えの時間の9割を2人の夫婦の会話劇だけで描いているという意味で全然敵わないよ。



しかも、割合引きの絵を長く使って何かを暗喩しているんだろうけど、ちょっと分かりにくいよ…最初の棒とヒモの暗喩は何なんだろう…何か意味あるんだろうけど汲み取れなかったし、冗長。



また、登場人物に魅力が無いのが決定的に厳しい…『ある結婚の風景』の夫ヨハンの哲学者然とした男が陥る事の滑稽さとか女々しさなどの魅力が無いし、妻マリアンヌの弁護士業から他者へのコミニケーションスキルの上手さと夫への依存からくる甘えのギャップの魅力とか、ラブレスでは深みがないんだよね…



夫はプログラミングの仕事で外に愛人がいて孕ませてる、離婚した奴クビって会社だからビクビクしてるし、子供嫌いにしか見えない。妻も美容師なんだろうけど口汚くてヒステリックで、やはり愛人が外にいるんだけどかなり依存体質。妻の母に至っては完全にノーマルを乗り越えた存在。コミニケーションを取れないし刺々しさしか無い。



こんな両親の喧嘩と、どちらからも拒絶、お荷物扱いを受けていたら当然子供は逃げ出すしかない。私は自殺か事故死か不明だけど、この辺もボカかさずに描くべきだったと思う。より先鋭化されられると思う。ならやはり自死を暗喩するシーンはあった方が良かったように思う。



ロシア警察というか公共機関のユルさもカフカ的でこの点は大変良かった。誠実みはあるが出来る事が限られてるのを理解させる警官の、でも事の重要性が全く共有出来ない感覚が良かった。



夫婦互いの浮気相手と言うか愛人をわざわざ出す必要あったのかな?この点でも『ある結婚の風景』は出さずに描けてる分、部が悪い。



ロングショットで引きの絵の綺麗さ、だけで含みを持たせたくなるのは分かる。また観客に考えさせたいのも、良く分かる。だからこそ決定的な部分をボカす、というのも分かる。が、あまり上手くないんだよね、そう受け手の観客が、あ、そういう事でボカしてるんだな、って分かっちゃ、底が浅いよ。別のちゃんとした理由があってボカさなければならない何かがあれば違ったのに。



ただ、両親の口論の際のドア閉めたら子供が、の演出はとても気が利いていて良かった。


しかしロシアってあんな巨大な廃墟があるんですね…そこはなかなか凄い。