確かに人生は、あのバーテンが言うような複雑でくだらない番組のようだろう。
最後に開けるまで中身にどんな価値があるさわからない革鞄を選んで持ちながら旅をする。
他人の鞄の中身が見える度に、あぁあれも欲しかったこれも欲しかったと後悔したりもする。
失くしてしまったもの。
手に入らなかったもの。
もう二度と戻ってこないもの。
自分にはもともと無いようなもの。
それらを想って絶望して、世界を産んだ神を憎むこともあるだろう。
病気や事故や戦争から幸運にも生き残って「しまった」と思うこともあるだろう。
孤独に死んでいくことが怖くもなるだろう。
最後に鞄を開けた時に「まぁ悪くはなかったな」と思えるような人生だと感じられる瞬間や人との関わり。それに出会う幸運を手に入れるのは、自分を見つめて受け入れる寛容さと素直さなのかな。
それが孤独な死の恐怖を和らげてくれたらなと思う。
そう、最期に思えるようにしたいな。
この映画に出会えたLuckyも鞄に入れて月まで持っていきたいと思います。
劇場を出てポケットから出したタバコがアメスピのオレンジじゃなかった事だけが、僕の後悔でした。
ハリーディーンスタントン最後の僕らに向ける微笑み。
さよなら。
今年一位更新。
素晴らしかったです。