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ラッキーのohassyのレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
3.5
孤高のラストカウボーイ


映画をたくさん観て来たことで映画鑑賞のプロになり、どんな映画でも楽しむことができるようになった。
一方で観るとなればやはり選ばなくてはならないので、どうしても趣向が偏ることになる。
だから、偶然知った作品とか勧められた映画を積極的に観るようにしている。
外した!なんてことはプロにはないし。

本作は、週末のランニング時に聴いているJ-WAVEの「ラジオどーなっつ」で紹介されていて、じゃあ観てみるかとなったもののなかなか劇場に行く機会に恵まれなかったところに、インスタでフォローさせていただいている方がすごく素敵なエピソードと共に鑑賞したことを投稿されていて、これは観るべきだなと思い直し、強引に予定を組み込むことで実現した。

人間本気になれば映画の1つ2つは観に行けるのだ。


肝心な映画の内容はと言えば、これは主演のハリースタントンの物語そのものといった作品で、ハリーを延々と観続けることになるのだけれど、これがずっと観ていられるからすごい。
クローズアップもあれば長回しもあるが、その豊かとは言えない表情や仕草、歩き方、話し振り、どれを取っても飽きるということがない。
笑えないジョークを言ったりワザと憎まれ口を叩いたりと、周りからすればちょっと変わり者で時に対応に困る御老体だけれど、こういうのはいちいち粋だなあと思う。
すごく好きだ。
実際ご近所さんたちらもすごく慕われている。

僕は映画好きという割に彼の出演作はあまり観ていなくて、「パリ・テキサス」は流石に観たけれど正直そこまで覚えていない。
そんな僕でもそうなのだから、好きな人にとってはこれはもう宝物のような作品なんだろう。

一見小難しい映画かなと思ってしまうけれど、とても観やすいストーリーだし、テーマも分かりやすいし、ファンキーな演出もあるし笑いもある。
医者に「倒れた原因は加齢だと言われた」と馴染みのカフェ主人に告げた時の、主人のリアクションには本当に笑った。
いまさら?!ってw
シナリオが成熟しきっていないことで、ダイアログが比較的ストレートだし変な含みが少ないところも、僕は好みだった。


最近は映画の主人公に憧れて真似をするなんてことはもうなくなったけれど、ラッキーの日常に触れたことで真似したいと思ったことが2つもあった。

ひとつはタバコ。
子供の頃から喘息持ちだったので幸いにもタバコを吸うことはほとんどなかったけれど、今回はかなりカッコよかった。
ここまでシビれたのはパルプフィクションのヴィンセント以来だ。
それこそ死んじゃうので吸わないけれど。

もうひとつは、音楽。
自身音楽家でもあるスタントンは、ラッキーとしても劇中で音楽を披露していて、ハーモニカを奏でる姿は惚れ惚れする。
が、一番すごかったのはもう間違いなく、近所の子供の誕生パーティで歌を披露するシーンで、これはもう「なんだよこのおっさんはーーっ!」ってなるしかない。
上手い下手を超えたところで響いてくるその歌声はその場のすべての人を巻き込む力があり、聞き惚れるしかないし感動するしかない。
もちろん上手いんだけど。

これは、ちょっと目指したい。
歌の練習ではなくて、こういう時に突然歌って、結果的に喜ばれるような、高い人間力を。

ところでこういう時に歌うべき曲といえば、日本ではなんだろう?欧米では何かしら伝統的でみんな知っている歌があるようで、カントリーロードやダニーボーイなんかはいい例だ。
日本だとなんだろう?
すぐには思いつかない。
何かそういう代表的な歌だというものを探して、これから楽器の練習曲にしたり、仕事で積極的に使っていくことで見つけられるといいな。
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