DZ015

ラッキーのDZ015のレビュー・感想・評価

ラッキー(2017年製作の映画)
3.8
少し偏屈な独居老人ラッキー。演じるのは2017年9月に亡くなったハリー・ディーン・スタントン。起き抜けにタバコ、コーヒー、ひげ剃り、ヨガを済ますと近所のダイナーでクロスワードパズル、夜はバーでブラッディメアリーのお決まりの毎日。偏屈ではあるもののどこか可愛げもあり皆から愛され心配されるラッキー。描かれるエピソードはスタントン氏の実体験に基づくものという伝記のような作品。自身の作品に度々スタントン氏を起用したデビッド・リンチ監督も登場。ツイン・ピークスでFBI副長官ゴードン・コールを演じ、とぼけた味わいの演技が上手いなと思っていたらここでもあのまんま。つまりあれは素だったと判明。笑う。

律儀なルーチン生活の中、ある出来事をきっかけに「現実」に直面するラッキー。おそらくこれもスタントン氏の人生観なのであろう何気ないシーンに散りばめられる示唆に富んだ哲学的な言葉の数々。そして言葉以上に刺さるのがある少年の誕生日パーティに呼ばれ突然披露するあること。あれは泣く。なんてかっこいい爺さんなのだろう。もちろんスタントン氏のお人柄あっての事という前提で、こんな最高の「遺作」を残して旅立てるなんてまさにラッキー。スタントン氏への愛とリスペクトに溢れた傑作。

「孤独と一人暮らしは同じではない」
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