名脇役ハリー・ディーン・スタントンの『パリ、テキサス』以来の主演作にして遺作。
90歳、気ままな独り身、丈夫な健康体、なラッキー。
ひょんなことから死へのカウントダウンを意識し、子供時代や従軍時代…人生のいろんなシーンを回想するわけだけど、悲壮感で溢れるわけではない。
死に対する戸惑いを静かに表現しつつも、
人生の黄昏を最期まで味わい尽くそうじゃないかとでもいうような、可もなく不可もないゆったりとした平穏を描写。
アリゾナの荒涼とした田舎の風景にハーモニカの音色がまたノスタルジックに沁みる。
死んだらこの意識はどうなるのか?
ただ無くなる。無。魂なんて存在しない。
だからあらゆる執着は捨てるべき。
じゃあ何をすれば?
ただ微笑んでよう。それしかない。
…これが結婚もせず宗教も信仰せず自分だけを信じてきたラッキーらしい結論。
それってまさにミスチルの『いつでも微笑みを』だ!と勝手に思ってジ〜ン。。
それにしても、彼は90歳にして全くボケてないし身支度もきちんとするしスタスタ歩くし、、ほんとシャンとしてる!
極めつけは、とあるパーティで悠々と披露したスペイン語の歌。ブラボー!
ここは周りの楽観主義的なラテンの血に救いを得た感もあるなぁ。
今考えるとこの辺りからラッキーは達観したのかな。
人の温もりをしみじみ実感し、死の恐怖を吹っ切ったというか。
ハリー自身の人生を投影させたという、自伝のような作品を俳優人生のフィナーレとして飾れるなんてとっても素敵!
終盤の光景は『パリ、テキサス』とオーバーラップした。
P.S. 実際に長年交友関係にあったデヴィッド・リンチが友人役で俳優頑張ってて、そこも見どころ。