カツマ

フォルトゥナータのカツマのレビュー・感想・評価

フォルトゥナータ(2017年製作の映画)
3.4
今年もこの季節がやってまいりました。ゴールデンウィークと言えばイタリア映画祭!今年は今のところ3本見る予定ですが、その一本目!

タイトルの『フォルトゥナータ』とは主人公の名前であり、その意味は『幸運』。
にも関わらずこの物語には幸運は人などほとんど出てこない。家庭内暴力に怯える一児の母も、アルツハイマーで記憶も曖昧な母を抱える双極性障害の息子も、出口の見えない闇の中をもがき続けていた。そんなスポットライトの当たらない日常に少しでも光を当てたい。劇中で流れるザ・キュアーの『Friday I'm in Love』なんて、正に庶民のための歌なのだから。

美容院の開業を目指すフォルトゥナータは娘を養うためにも出張美容師をして小金を蓄える生活。離婚間近の夫は突然訪ねてきてはフォルトゥナータを力でねじ伏せ、そのたびに彼女の生活に暗い影を落としていた。
お金も無く、夫の暴力に怯える毎日を送っていたフォルトゥナータだったが、娘の通う心理カウンセリングの医師との出会いが彼女の抑圧されていた人生に新たな息吹を吹き込む。だが、医師に惹かれるフォルトゥナータと娘の間に微妙な距離が生じてしまい、娘の心は徐々に夫に傾き始め・・。

フォルトゥナータは幸運を待っていた。いつかは宝くじが当たると思っているほどに。しかし、人生はそんなに甘くなかった。彼女は幸せを求めるあまり利己的な選択に走り、自分の大切な人を不幸にしてしまう。その行動は利己的で非難されるべきかもしれないが、とても人間臭くてリアルだった。

これはそんな人間臭い女性フォルトゥナータにとってのシンプルな幸せを再確認させる物語。幸運は訪れなくてもきっと人は幸せになれる。そう、例えその幸せが他人から見てどんなにちっぽけだったとしても。

追記
イタリア映画祭はあと2本見る予定です。
今年は『チャンブラにて』と『いつだってやめられる名誉学位』!どちらもかなりの注目作なので楽しみです!
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