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女王陛下のお気に入りのadeamのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
2.5
ギリシャ出身の鬼才ランティモスにとって大きな飛躍となった宮廷ドラマ。
魚眼レンズとクイックなパンの多用は監視カメラっぽさがあり、18世紀の宮廷での暮らしとそこで繰り広げられる事の顛末を覗き見ているような感覚を生んでいます。
縦関係の二人の女による熾烈な蹴落とし合いは「イヴの総て」を想起させますが、一つのポジションを争うのではなく、女王からの寵愛をそれぞれのアプローチで奪い合うところが今作の面白みになっています。
女王と長く特別な関係であるものの、その職務の肩代わりを担う為に目に見えて軋轢を生み、敵を多く作り、女王にすら独善的な先輩。
若さとしたたかさを活かして女王の心を掴み、自らの利用価値を高めるものの、結局は周囲から利用される立場である後輩。
そんな二人の攻防が楽しかったです。
しかし後輩が最初の企みの時点でわざとらしい咳払いをして薬草アピールをするので、早々に物語からスリルは消えます。
その後は真顔でおかしなことをするランティモスらしいユーモアが残るのですが、作家性の表れであった常軌を逸したおぞましさを感じさせる奇抜な展開が今作では訪れず、ドラマとしてもシュールなコメディとしても振り切れていない平凡で口当たりの良い仕上がりなのは残念でした。
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