18世紀のイギリス。フランスとの戦時下、宮廷では虚弱で病身な女王アンの傍で、親友のレディ・サラが世話をしつつ情勢を握っていた。ある日新しい召使いアビゲイルが現れることで、宮廷での状況が変化していく。ヨルゴス・ランティモス監督のヒューマンドラマ作。序盤から(タイトルコールですら)監督節が満載で、雰囲気から素敵。宮廷という限られた空間が基本的な舞台で、様々な登場人物がいるが、女王アン、側近レディ・サラ、そして召使いアビゲイルの3人の女性の物語が複雑に絡み合う展開は見事。序盤の3人のパワーバランスから、徐々に浮き沈みしながら変化していく展開の魅せ方は娯楽があり良い。3人の個性が何一つ似ていなく特徴的だからこそ、一喜一憂したり、時には崩れたり変化する様が印象的。王道な女性の物語に、女性が主人公ながらの辛口の物語、監督のハイセンス、時には奇妙なセンスが盛り込まれた、エンタメ性のある宮廷絵巻になっています。監督の術中にハマる奇抜な構成も魅力的。そして、本作における彼女たちの結末も、監督節のエッジの効いた余韻を残すものになっていて良い。各々の女性を演じたオリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズ、そしてエマ・ストーンの個性的な演技は素晴らしい。
