【競い合う】
前作、｢聖なる鹿殺し｣で鮮烈な印象を残した、ギリシャの鬼才[ヨルゴス･ランティモス]。独特なカメラ撮り、奇妙な設定、表情をあえて表さない役作りで知られる、彼の[不条理な世界観]を、[中世イングランド]を舞台に、どう表現していくのだろうか…。
予告編でも気になった方は多いと思うが、今回も[独特なカメラ回し]をしている。映画評論家の町山さん曰く、[魚眼レンズ]のようなもので撮っている。しかも、遠目から撮ったり、[下から見上げる]ように撮ったりしている。
この方法は、｢聖なる鹿殺し｣でも使われた事だが、[表情の無い]作品であるがために、その独特なズームによって、監督なりに[表情を表現]しているように見えた。本作では、｢聖なる鹿殺し｣ほど表情が無いわけではないが、終始真顔で、読みにくい部分があるため、この方法が用いられていた。
そして今回、[女王陛下のお気に入り]で一番の見所は、役に劣らず、女優男優たちの[演技合戦]がある事だ。
どういうことかと言うと、回りにいる従事たちや、ただ突っ立ってる使用人でさえ、目につくほど、一人一人に[隙が無い]のだ。監督が本作で一番力を入れたのであろう。
僕が特に印象的なのが、[オリヴィア･コールマン]の女王だ。普段のコールマンよりも、かなりの[やつれ具合]だったし、彼女の迫力はもはや、"狂気"を感じた。
ヨルゴス･ランティモスの作品をいろんな観点で観る方は、たくさんいる。
そんな意味で、観ている我々はある意味で、[試されてる]のだ。
本作で、役に劣らず演技合戦を繰り広げているキャストたちのように、本作で、
我々も[映画の世界観と競わせていた]のかもしれない…。
