ゆっけ

女王陛下のお気に入りのゆっけのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0
SNSなどで知らずと「いいね」をもらうがために頑張って投稿して疲れてしまった人に観て欲しい映画。

この映画、観ていてやばいなとヒヤヒヤするシーンがたくさんあって、
いたって真面目風な映画に見えるのですが、所々ブラックな笑いが散りばめられています(苦笑いです)

18世紀初頭のイングランドを舞台にした宮廷ドラマ。
病気がちな女王(アン)と幼なじみのレディ・サラ、新入りの召使いのアビゲイル。他男性も少なからず登場するのですが、完全に添え物です。この三人が主でストーリーは流れます。

無知な女王を手なずかせようとする、女性同士のドロドロしたバトルが見もの。

当時、イングランドはフランスと戦争中で、戦争推進派と調和派で意見が分かれていました。サラは夫が戦争推進派でもあり、自らも知性も武術も長けていたこともあり、女王を教え説くし、意見をズバズバと言います。当然女王は、どうしたらいいか自分では考えられないし、サラの言うことを聞く"操り人形化"しています。

女王に対して、「メイク変ね、アナグマみたい」と言ったり、こんな態度でいいの?って言うほど厳しいこと言っちゃうから観ていてびっくりするんですが、面白いですね。。

そんなとき、上流階級から没落したアビゲイルが召使いとして宮廷にやってくるんですね。アビゲイルはお節介というか、多分計算高い賢い女性で、女王とレディ・サラのある秘密を知ってから、女王との距離をどんどん縮めていきます。

そこから、女王を獲るために、二人の女性が戦います。けれどもかなり陰湿な戦いなので、観る人によっては理解できないこともあるかと思いますが、結構女性にありがちな嫌がらせが多いんじゃないかなと思います(女性の体験談とか悩みを聞く限り)。もちろん程度の違いはあるかと思いますが。。

ただ「上の人に気に入ってもらうためのお作法」が学べると思います。
ー偏愛を知り、それを愛でること。
ー時には罵り、時には大げさなほど愛すること。
ー正直でいること、隠し通すこと。


女王も女王で、過去に17人の子供を亡くしていることもあり、精神的にかなり崩壊しているんですよね。ウサギをその子供たちに見立てて可愛がったり、ケーキを食べまくって戻したり。痛風で自分で歩けない上に、突如ヒステリーになったりもします。

孤独を抱えて、愛に飢えているんだと思います。だから、二人が自分を求めて戦っていることを知ってもニヤニヤしているんです。

愛と憎しみの果てに何が待っているのか、考えたら、かなり怖いドラマなのですが、顛末は分かりやすいものでもないので、好き嫌いは別れるタイプの作品だと思います。『ファントム・スレッド』のような映画が好きな人にはオススメです。

「お気に入り」と言っても、そこに本当の「愛」や「尊敬」があるんですか?と言うことを問いかけます。上司に気に入ってもらいたい、憧れのあの人に気に留めてほしい、そんな見せかけの「いいね」や「フォロー」もらっても意味ないでしょって言われている感じしますよね。

一見上品なものの裏側に腹黒いものが見えるって、なんか見てはいけないものを見てしまった感が残る、なんとも不思議な映画でした。自分はこういう政治的なやりとりが正直苦手なので、好きではないのですが、いや面白かったです。

ともかく、今年の第91回アカデミー賞で、作品賞と監督賞をはじめ9部門10ノミネートされているわけで、豪華な衣裳やヘアメイク、美術など、はぁと溜息がつくほどの美しさをぜひ堪能してください。ドラマのほとんどが宮廷内を映し出すのですが、その全体を見渡せる広角なカメラの撮り方が印象的です。

そして、女優賞にノミネートされている、オリヴィア・コールマン、レイチェル・ワイズとエマ・ストーン、3人の演技がすごいです。

エマ・ストーンのサービスショットや暴れっぷり、そしてあんな塩対応が見られるなんて、、、

女性キャラの濃さを味わいたい人にオススメです。

ラストに流れる、エルトン・ジョン「Skyline Pigeon」が好き。
ゆっけ

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