YokoGoto

女王陛下のお気に入りのYokoGotoのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.9
<あさましくて、えげつなくて上品。そして、どこか爽快>

今年の米国アカデミー賞のノミネートとしては、最多10部門にノミネートされた本作。

主演女優賞にオリビア・コールマン、助演女優賞にエマ・ストーンとレイチェル・ワイズ。
女性による、女性のための映画と言っても過言ではないほど、女性づくしの宮廷物語であった。

舞台を、現代ではなく18世紀初頭に設定するだけで、衣装やセットは豪華になる。
映画としては、一手間も二手間もかかる大作となるのである。

本作『女王陛下のお気に入り』もそう。

豪華な衣装と宮廷内の風景を丹念に作り上げ、見事なまでに18世紀初頭の風景を、美しい映像で蘇らせている。所々に入る広角レンズは、どこかゆがんだ宮廷内を、皮肉っているかのように見えた。

ロケ地は、ハットフィールドハウスというエリザベート1世が幼少期に過ごした館のようだ。
実際は、宮廷の一部の部屋でのみ展開されるので、うまく映像を撮影しているな、と思った。

そして物語は、ブリテン王国の女王陛下の、ごくごく身近な側近たちの物語なので、すべてが密室の中で展開される、実に閉鎖的な愛憎劇にしあがっている。

物語の中では、フランスとの戦争中ということなのだが、戦地で闘う軍平も、大勢の民も、一切でてこない。
果たして、本当に、この女王陛下は王国の政治を取り仕切っているのだろうか?
そんなことさえ思い巡らされほどのアンバランスさは、宮廷の閉鎖的な世界を表現するに、必要かつ十分であった。

本作が面白いのは、女性しか登場しないこと。
もちろん、男性キャストもいるが、ほとんど脇役に収まっている。

国を掌握しているのは女王陛下であるのだが、そのすぐ側で取りしきっているのが、幼なじみのサラ。
完全に女王陛下の心を掴んでおり、国政を自由にあやつっている。そこに割って入るのが侍女のアビゲイル(エマ・ストーン)。この複雑な三角関係が、あまりにもあさましく、そしてえげつなく、そして美しくて上品だ。

普通であれば、愛憎劇といえば男女関係に用いられる。
しかしながら、本作は、いびつな女性だらけの愛憎劇である。
これがまたえげつないほど浅ましい。

そして、その愛憎劇は、18世紀の世界観を重たくせずに、どこかコミカルささえ感じように作られている。
終始、その毒に魅了されるから不思議である。

本作では、オリビア・コールマンが主演女優賞にノミネートされているが、実際は、ほぼエマ・ストーン主役の物語であると思った。それくらいエマ・ストーンの魅力に溢れた映画だと思う。イギリス人のキャストで固めたのだが、唯一エマ・ストーンだけがアメリカ人。しかし、エマ・ストーンが魅了し、エマ・ストーンに振り回される映画でもある。

最初から最後まで、あさましくて上品で、かつどこか爽快な映画であった。
YokoGoto

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