ひろ

女王陛下のお気に入りのひろのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.2
ヨルゴス・ランティモス監督によって製作された2018年のアイルランド/アメリカ/イギリス合作映画

18世紀初頭にフランスと戦争状態だったイギリスのロンドンが舞台。実在した人物であるアン女王と側近サラ・チャーチル、アビゲイルの3人の女性を中心に描いた物語。議会のあるイギリスだが女王のトップダウンで物事が決定する時代。出世の道は女王に取り入ること。側近のサラとサラに拾ってもらった野心的なアビゲイルのバチバチした女の戦いは最早ホラー

いつの時代も女性は強い。男性が戦地や議会で戦っている最中、そんなシーンはほとんどなく、ひたすら宮廷内の戦いが描かれていく。ウィンストン・チャーチルやダイアナ妃の先祖であるサラ・チャーチル。女王を支配し国の舵取りをする強い女性。没落した家系のアビゲイル。再び返り咲きたいと願う野心的な女性。アン女王。情緒不安定で浪費家の危うい女性。そんな3人がそれぞれの思惑で行動するので一筋縄ではいくわけもない

男目線だと戦争より怖い女性の戦い。少年漫画では戦った後は握手して仲間になるものだが、女の戦いはそんなわけにはいかない。どちらかを倒すまで納得いかないのだ。あー怖い。この緊迫感を演出したヨルゴス監督の手腕は素晴らしい。無駄な音楽もなく、絢爛豪華な宮廷の調度品やパーティ、衣装と似つかわしくないドロドロの戦い。それは全て3人の名女優による演技バトルを引き出した監督の計算に違いない

アビゲイルを演じたオスカー女優のエマ・ストーン。素直な女性から野心的な女性に変貌していく難しい役柄を演じているが、この女優は本当に化けてきた。サラを演じるレイチェル・ワイズもオスカー女優。圧倒的に上から目線の強い女性サラ。レイチェル・ワイズの演技も迫力がすごい。そしてGG賞やヴェネツィア国際映画祭女優賞など総ナメにしているアン女王役のオリヴィア・コールマン。この役で一気に時の人になったオリヴィア。自分がないようであるような気分屋の気難しい役柄。この演技はオスカーも受賞するかも

時代背景や衣装、小物に至るまで気を配らないといけないから歴史物は面白い。歴史に忠実に描いたって、人と人のやりとりは脚色しないといけないので、そこは製作者のセンスが問われる。この映画は監督や脚本、俳優の演技、衣装などがハマったタイプの成功例だ。内容的に精神が疲れるが、あっという間に終わってしまうぐらい中身の濃い作品だった
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