三樹夫

女王陛下のお気に入りの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ベルばらにおけるアントワネットとポリニャック伯夫人のように、裏で女王を操るサラ。そこへ没落貴族のアビゲイルが女中としてやって来て、どちらが女王のお気に入りとなるのか、レイチェル・ワイズVSエマ・ストーンの女王の寵愛をめぐる、メインの3人全員がゲロを吐く苛烈なバトルが始まる。
アビゲイルはもう一度上流貴族へと返り咲くべく、せっせと女王のポイント稼ぎ。手柄を立てたらちゃんと自分の功績を女王にアピールする、これ大事。女中連中から嫌がらせくらったり、男連中のクソっぷりの被害にあうがそれでもめげずに野望を燃やす。エマ・ストーン特有の、笑ってんのか困ってんのか分からないようなエマスマイルも炸裂。泥の中へ突き飛ばされたり、皿やコップ運んでる中驚かしてきたりと、男連中の立ち振る舞いが観ててぶち殺してやりたくなるぐらいクソなので、戯れてるのか戦ってるのか謎なあのシーンで、ビンタをバシバシ食らわせていて溜飲が下がる。
サラは戦争継続派の与党の側にいて、アビゲイルは戦争終結派の野党の側と手を組むが、どっちもどうしようもない連中なので、こんな連中に税金搾り取られる市民はたまったもんじゃないわ。貴族連中の醜怪ぷりは、裸のキモいデブの汚いオヤジに果物を投げつける、貴族の戯れのひと時CMみたいな、あのシーンに象徴されている。

女王の中でサラとアビゲイルの存在が逆転した決定的な瞬間があって、それはアビゲイルが17匹のウサギを可愛がった次の日に、サラがウサギでしょと言ったシーン。あのウサギは死んだ子供の代わりであり、女王にとってはウサギであってウサギでないわけで、そんな大事なことを忘れているというのはそれは気持ちを感じられないわ。あのシーンはすごく共感した。これ前に言ったのに忘れてるんだ…、っていうのは結構あると思うのだが。逆に自分の言ったこととかを相手が覚えていると嬉しいからね。
女王は孤独な人で、何故通風を患っているかというと、バクバク甘い物ばっか食べてるからで、なぜ甘い物をやけ食いするかというと17人の子供が死んで孤独で辛いことを紛らわそうとするためだが、でもそんなことで辛い気持ちを癒すことはできない。17匹のウサギも同様で、孤独をうめるために飼っているけど女王の孤独は決してうまらない。ウサギは孤独をうめるためのもの、しかし孤独をうめることはできないものとして象徴されている。
ラストシーンでウサギが印象的に使われていて、女王とアビゲイルとウサギがオーバーラップしていく。これは女王はアビゲイルを、自身の孤独をうめるために飼うけど、決して孤独をうめてはくれないということであろう。女王にとってはアビゲイルもサラもウサギである。
オリヴィア・コールマンはこの役でアカデミー賞を受賞していて、アビゲイルがウサギに気付いたシーンでは、微妙な表情の変化で喜びを表現しておりさすがだなと思った。
三樹夫

三樹夫