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女王陛下のお気に入りのogのネタバレレビュー・内容・結末

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

虚しくてしかたないなぁ。
偽りの愛すらなくしてしまったアン女王はこれから一体どうやって生きていくのだろうか。

広角レンズ、魚眼レンズが使われていて、ながーい廊下が歪んで見えているの、アン女王は誰かに連れて歩いてもらわないと自分が宮殿の中のどこにいるのかもわからないのを強調しているように見えた。そのときアン女王はwhere am iと泣き叫んでいるけど、who am iと言っているように見えた。
自分が何者なのか、何のために生きているのか、痛風で歩くこともままならないのに、吐きながらも甘いものを食べ続ける。裏切らないのはモノだけだとでも思っているかのように。

サラが追放されてから、アン女王に顔面神経麻痺の症状が出ていて誰が見ても明らかだったのに、アンの体調や身の回りの世話はサラがしていた(もしくは指示を出していた)時のようにアビゲイルがすると思われていたから、そのまま放置されてしまったのかな。自分では気づいているのかいないのか、諦めているのかわからなくて切なかった。

おそらくアン女王を守るためのサラの厳しさ(政治のために一部アン女王を利用していたようにも見えたけど、幼少期の思い出話や最後の手紙を思うと、政治に介入するのもドロドロした恐ろしい世界から彼女を守っているようにも見えた)が、甘い嘘を並べ立てるアビゲイルと比べると冷たく見えるのは当たり前で、アン女王にはそれぞれの態度がどこから来ているのか、なぜなのかというところまで思考が及ばなかったんだろうか。いや、そんなことには気づいていたけれど、自分の情動をどうすることもできなかったのかな。自分の口から出た言葉の重さを知っているからこそ、それを自由に、なんの罪悪感も重圧もなくほしいままにできるような人だったら、あんなに苦しんでいなかっただろうし。

アビゲイルがサラの手紙を燃やして泣くシーン、本当は自分も貴族らしく、気高くありたかったんだろうなと思わせる。しかしアビゲイルは父親に売られて最低の生活を送り、泥水をすすりながらどうにか生きてきた。それを考えると、どんな手を使ってでも、誰を利用してでも自分の信じる幸せを得ようとするのは人間の感情として当たり前なのかもしれない。それが女王の幼馴染であり絶大な権力な持っていた人間を退けてしまうほどの執念深さだった、というだけのことで。

ラストの「脚を揉め」、アビゲイルと出会った最初のシーンに逆戻りしたという意味だよね。一時は気休めになり、偽りでも愛を与えてくれていたアビゲイルの存在が、ただ脚を揉むだけの存在になる。しかしそばにサラはいない。アン女王はすべてを失っている。
アビゲイルはそれが一生続いていくことを覚悟していたんだろうか。
サラはずっと一緒に生きてきたから覚悟していたんだろうけど、「イングランドにはうんざり」と国外追放されるの、解放された感があったんだよな。負け惜しみのセリフには思えなかった。だからきっと、そうだったんだろう。
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