10円様

女王陛下のお気に入りの10円様のレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.8
女王の寵愛を得んが為、2人の女性の憎の部分を切り取った映画。これはレイチェルワイズとエマストーンの静かにぶつかり合う彼女たちの負の映画かと思いきや、実は見事なまでのオリヴィアコールマンの映画であった!コールマン。うますぎる!そしてこれはヨルゴスランティモスが自身の作家性を持たせつつも大衆的に仕上げた娯楽作品である。「ロブスター」や「聖なる鹿殺し」で魅せたあの不明な不快感を残しつつも万人に受け入れられる作品。たまにこんな監督をみるよね。例えばガスバンサントとか…

歴史で学ぶアン女王、肖像画で知るアン女王。どれも威厳に満ちたもので認識される偉人の「実際はこんなもんだよ」感が観ていて滑稽なのだ。広角的に観ると時代情勢とかはシリアスなのだが一部分だけを切り取ると喜劇のようである。チャップリンの言うとおりだ。ヨルゴス監督の特異性は「ロブスター」を観るとなお分かるが、この映画が入門編でも良いと思う。

会話の応酬と内容、間の取り方、緩急のつけ方、温度差、そして役者の表情と仕草が素晴らしい!過去作品はその映画の性格から役者の静かな会話とあまり変化のない表情で成り立っている。これに退屈する人は多いかもしれないが、今作品はガンガンしゃべる。しかも女の黒い部分をさらけ出しての毒!そしてそんな2人を尻目に我が道を往く女王陛下の温度差!史実この寵愛戦争や女王の後継者問題はもっとシビアであった。それをこんな風に料理できるヨルゴスランティモス監督の次回作が楽しみで仕方がない。

まあこの映画が評価された裏にはやはりフェミニズムのムーブメントがあるよう思えるが、それ抜きにしても不思議な好感が持てる一作であることは間違いない。
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