ハッピーアイスクリーム

女王陛下のお気に入りのハッピーアイスクリームのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.6
18世紀初頭、フランスと交戦中のイングランドでは、アン女王の寵愛を受ける側近の女長官サラがその権力を意のままに操っていた。そんな宮廷に召使いとしてやって来た、サラの従妹・アビゲイルはアン女王に気に入られ、すぐさま側近へと昇格していく。自身の地位を脅かす存在に危機感を抱くサラと、野心を芽生えさせてゆくアビゲイル。愛と野望を勝ち取るのはどちらか。

下克上エクスタシー

『籠の中の乙女』『ロブスター』などを手掛けた鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が描く歴史劇。第91回アカデミー賞ではオリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズが揃って助演女優賞にノミネートされるなど、3人の演技合戦が評価された。

豪華絢爛な王室とは裏腹に女性たちが潰し合うドロドロの醜い争い。女性のしたたかさや、腹黒さをピンポイントで描いたような作品でした。おっかない。

初めは3人とも全然違うタイプの女性なのに、話が進み、それぞれの立場が変化していくにつれ、結局中身は大差ないことに気づく。女性に対する偏見とかじゃなくて、権力とは人をそういう風に変えてしまうものなのだろうと思う。
僕自身、なんでも意のままに操る地位を手にしたら今のままでいられる自信はないし、実際、出世して立場が上になった途端に変わってきた人間を何人も見てきた。
特に女王の生まれた時から地位の高い人間に見られる特有の傲慢さとワガママっぷり。そういう人たちみんながそうとは限らないのだろうけど、ものすごくリアル。否定したり、叱ったり“正す人間”がいなかったらこうなるというのはよく分かる。

そんな女王役を演じるオリヴィア・コールマンの演技は世間でも評価されている通り素晴らしかったです。序盤のイノセントなメンヘラというぶっ飛んだキャラから、少しずつ喪失感や諦めのような感情を経て変わっていく姿がまるで別人のよう。感情の起伏が表情で凄いわかりやすい、顔に出やすい人を見事に演じてたように思います。

“私は嘘をつかない それが愛よ”

身の丈に合わない権力は自らを滅ぼす。

勝ち取った恍惚に浸って自身を見失うと、我に返った時、ひとりぼっちになっていることに気づく。それに気づくことすらできず、正体の分からない虚しさを抱えたまま生き続けることだってある。

なんでも手に入るからって
全部手に入れたら きっと
その重さで潰れてしまうんだ。

愛と権力。
どっちか1つなら、どっちを選ぶかな。