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ザ・スクエア 思いやりの聖域のfujisanのレビュー・感想・評価

3.3
気まずいにもほどがあるだろー🤨って映画でした。

ご存知、気まずい映画を撮らせたら世界一のリューベン・オストルンド監督作品で、今作と次の「逆転のトライアングル」で二作連続カンヌ映画祭の最高賞パルムドールを獲得しています。

映画は「フレンチアルプスで起きたこと」同様、全編気まずいのですが、今作は現代芸術をテーマにしていることもあって、少し分かりにくい映画になってしまっている印象です。

現代芸術とは、例えば、その辺にあるようにしか見えない石ころが積み上げられて展示され、作品の題が掲示されているような芸術作品。

見る人によって素晴らしい芸術作品に見えたり、ゴミにしか見えなかったりと、見る人の芸術教養を試されているようでもあり、裸の王様的でもある、いかにも監督が好きそうなテーマです。


ストーリーは、その現代芸術を集めた美術館のチーフキュレーター(責任者)であるクリスティアンが、日々色んな気まずいことを引き起こしたり、気まずいことに巻き込まれる作品です(乱暴😑)

映画では、タイトルにもなっている「ザ・スクエア」という現代芸術作品を巡って大騒動になります。

ザ・スクエアとは、ジャケ写にもある床に引かれた四角形🔳のことで、”ここでは誰しもが思いやりを持って相手に接しなければならない” というルールがあり、知らない人同士が四角の中で相手を思いやる体験をすることで思いやりに気づかせられる、という芸術作品。

これは、映画を観る人に対する問いかけでもあり、このスクエアをどう捉えるかによって映画の見え方が変わってきますが、ネタバレ必須になるため、後半に書きます。


映画としては、少し分かりにくい現代芸術がテーマなうえに、フレンチアルプス~の雪崩とか、逆転のトライアングル~での沈没のような大イベントも起きないため、150分間、延々と粘着質的ないじわるさ、気まずさだけが続く感じで、好き嫌いが分かれる映画かな、という印象です。


以下ネタバレの考察です。

















個人的には、スクエア=境界(ボーダーライン)と、スクエア=窓と2つあるかなと思いました。


■ スクエア=境界(ボーダーライン)

最初に気まずい何かが起き、それを許すと、相手がどんどんエスカレートするという流れで、あなたならどこまでは許せますか?を問いかけてきます。

たとえば、

・大事な会議に新生児を連れてくる。最初はいいが、ぐずり始める
・展示会のトークショーでトゥレット障害*の男性が奇声をあげる
 (*静けさに耐えられず、定期的に奇声をあげてしまう神経精神疾患のひとつ)
・料理の説明がをしてくれているシェフの声を無視して、ぞろぞろと料理会場へ移動を始めるパーティ参加者たち
・恋人とのセックスの後でコンドームをどちらが捨てるかで揉める(ってか、ごめん、これはちょっと意味がわからない)
・砂山の現代芸術展示で、崩れてしまった砂山を、作者に内緒で勝手に直す
・ホームレスにサンドイッチを買って差し出すと、玉ねぎが抜いてないと怒り出す

という感じ。

これはしょうがないかな、というところから始まり、どんどんエスカレートしていって、さすがにこれはあかんやろっ!っていうポイントを探られている感じ。

その ” 許せる範囲 ” が四角い枠(スクエア)であるという考え方。

パーティ会場で猿を演じる俳優の行動がだんだんエスカレートしていくシーンも、一人が殴りかかったかと思うとその後は全員でタコ殴りで、背後では「その男を殺して!」の声まで。

皆さん、ついさっきまでアートだと思ってニヤニヤ観てましたよね。どこまでがアートで、どこからが現実なんですか?っていう、監督からの問いかけ。


■ スクエア=窓(物事が見える範囲)

まずこの「四角の中(では)全員が思いやりを、」っていうところが気になります。

四角の中だけではちゃんとしよう、人が見ているところだけではちゃんとしよう。に対して、じゃあ、見えないところではどうするの?、あなたが見えている範囲も一部なのでは?っていう問いかけ。

たとえば、

・ホームレスが元気無く座ってる前で貧しい方々への募金を呼びかけていたり(後ろのホームレスにまず支援してあげたら?)

・自分の用事のためなら、小さい子どもたちをスラムの治安の悪いところだろうが連れて行ってしまう

・「思いやり」が主題の現代芸術作品のプロモーションなのに、Youtubeで炎上マーケティングをやってしまう

という感じで、人が自然に、あるいは意図的に設定している、” 見ない世界 ” 。見るところと見ないところ。それが絵画的な絵の切り取り方、窓であるという考え方。




監督はこの映画そのものも現代芸術として提示し、どう観るかはあなた次第、というスタンスなので、これもあくまで私の勝手な解釈です・・・が、まぁ、正直しんどい作品ですよね😥 面白いけど・・😅

この映画の主人公、クリスティアンはテキトーな男で、たびたび境界からハミ出てトラブルを起こしますが、でもまぁ、自分もヘラヘラしちゃうかもしれないです😅


結局、なんだかんだで最後まで楽しんで観たのは事実ですが、ちょっと食べ過ぎで胸焼けした映画でもありました。



余談1:
リューベン・オストルンドの作品として今観れるのはあと「PLAY」のみ。JAIHOでしか配信してませんが、せっかくなので観てみようと思います。

余談2:
この映画よりも、最近見た「シン仮面ライダー」のNHKドキュメンタリーでの庵野監督と田淵アクション監督のギスギス感の方が気まずかったかも・・😅




2023年 Mark!した映画:121本
うち、4以上を付けたのは15本 → プロフィールに書きました
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