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ザ・スクエア 思いやりの聖域のkyokoのレビュー・感想・評価

3.9
先行プレミア上映にて。

「こんなものにこんなお金を払っちゃう」現代アート界への揶揄、ネット社会の脅威、都合のいい時だけ「表現の自由」を振りかざすマスコミ、貧困や差別など、負の要素をシニカルな笑いで包むという手法は相変わらずだけど、一見難解なように見えて、こめられているメッセージは案外ストレートなものであったようにも思う。

アート作品「ザ・スクエア」はスウェーデンで実際に監督が企画・展示したものだという。“思いやりの心について考える”という意図で作られたその作品は、実際にあった事件がきっかけになっているとのこと。
劇中ではその作品によって窮地に立たされるという矛盾が滑稽さを生み、最終的には「罪と恥の意識」との対峙を迎える。(このあたりの解釈は監督の話により分かったことであって、今回ご本人の話が聞けて本当に良かったと思う)。
主人公は自分の意志とは関係なしに悪い方へ悪い方へと転がされているようにも見えるけれど、すべては自分が選択し、引き起こしたこと。
大なり小なりこういうことは我々にも十分起こりえることだ。
「失敗したらどうしたらいいのか」という、いたってシンプルな問いを投げられて、きちんと答えを見出すことができる150分だった。

皮肉屋だと思っていたオストルンド監督はとても優しくて真面目な人(&イケメン)。

授賞式での猿人パフォーマンスは気まずさを通り越して恐怖。

底意地の悪い私はやっぱり「フレンチアルプス~」のほうが好き。
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