カツマ

ザ・スクエア 思いやりの聖域のカツマのレビュー・感想・評価

4.4
危うく性善説vs性悪説論争に終止符を打ちたくなるほど人間の本質を悟らせ、自虐的な真実を描いている作品が爆誕してしまった。思いやりの聖域とはよく言ったもので、そこは人間の本質が試される場所。人間は他者を疑うことをやめられないし、信じることは圧倒的に難しいことだ。自分の弱さを認めることが何より近道なのに、プライドや葛藤が邪魔をして、一番シンプルな応えに辿り着けない。そんな分かりきっていることを奇想天外なストーリー展開と、複数の問題提起を矢継ぎ早に連射して、その矢の一本一本がグサグサと突き刺さってくる作品だった。
『フレンチアルプスでおきたこと』を撮ったリューベン・オストルンド監督の世界観ここに極まれり。彼は人間をこんなにも突き放すのに、どこかで期待しているところがあるのも興味深い。

とある現代美術館のキュレーターを勤めるクリスティアンは、美術館の新たな目玉として人間の本質に迫るアート作品『ザ・スクエア』の展示を企画していた。その正方形に切り取られたエリアに入ったものは何者も平等であり、助け合わなくてはならない。
だが、クリスティアンはこのプロジェクトに集中できない理由があった。それは彼が路上で人助けをした時に財布とスマホを盗まれたという出来事があったから。スマホのGPSをもとに犯人のアパートを割り出したクリスティアンは、アパートの一室の全てに泥棒宛の脅迫文を投函するという愚行に走る。彼の意識はこの脅迫文のことで頭がいっぱい。しかし、それとは別に美術館の宣伝広告は過激な方向へと向かい始めていた。

凄まじく情報量が多く、そしてその分問題提起もたっぷりと込められた、よく言えば自己啓発というか自己警告映画でもあった。人間ってこんなにも自分がかわいいものなのかと絶望したくなってしまうが、自分もそんな人間の一人であり、反面教師のような要素も含んでいる。

ガチのモンキーと人型のモンキーがインパクト大。いや、人間よ、ホントにそんなことだと猿と変わらんぞ。この映画からはそんな叱責が聞こえてきそうだ。
あの狭い正方形の中にしか思いやりの空間が無いだなんて悲しすぎるから、きっとこの映画の終わり方が凄く好きになれた。醜いばっかりでも、人間もそんなに悪くない、よね。
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