lp

ザ・スクエア 思いやりの聖域のlpのレビュー・感想・評価

4.3
昨年のパルムドール受賞作にして、『フレンチアルプスで起きたこと』のリューベン・オストルンド監督最新作。

2時間30分の長尺がほとんど気にならない、予想を遥かに上回る面白さだった!
今作は成熟した社会に生きる人間が抱えがちな矛盾を、「これでもか!」と言わんばかりにあぶり出す。思わず笑ってしまうシーンもあるのだけど、笑えるシーンは全て笑っている観客サイドにも当てはまる事象である・・・という特大ブーメラン構造が全編を貫いていて見事。本当に気持ちの良いほど痛いところをグサグサさ突いてくる。

ちなみに、今作が炙り出す「矛盾」とは、例えば以下のようなもの。
「あなたは全ての人が幸せに暮らせる社会を望んでいますか?・・・今「はい」と答えたあなた、ホームレスから「お金を恵んでくれ」と言われたら、必ずお金を渡しますか?」といったようなもの。

今作が見事なのは、ただ単に社会の中に潜む「矛盾」を描くだけでなく、そこへさらに「炎上商法」「芸術と商業性のギャップ」「エゴの暴走」「差別と偏見」などのテーマへも積極的に目配せをしているところ。
特に今作の白眉に映ったのは、猿人間のシーン。嘲笑の対象にしていた相手が、ガチのヤバい奴だと分かった時に、人の対応がどう変わるかを端的に示したメタファーで素晴らしい。同様の理由で、芸術家へのインタビュー時に客席にいる観客の件も良い。

リューベン・オストルンド監督、次回作へも大いに期待したい。
lp

lp