TaiRa

ザ・スクエア 思いやりの聖域のTaiRaのレビュー・感想・評価

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「『ザ・スクエア』は信頼と思いやりの聖域。全ての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」…四角いスクリーンには真逆のものが映る。

現代美術館のキュレーターに降りかかる災難と因果応報の末路。意地悪なギャグシーンはモンティ・パイソンのスケッチみたいだった。前作『フレンチアルプスで起きたこと』に輪をかけて意地悪。ギョーカイ人への辛辣さ。主人公は悪行と善行を行ったり来たりする。悪行とは主に無知無関心。路上の物乞いたちへの無関心。思いやりのなさ。ただ女性が困っていると助けようとする。人を助けたつもりが相手はスリだった。盗まれた財布とスマホを取り返す為にスリのアパートを特定し、全室に(部屋までは分からないから)脅迫文を送る。その帰り、車にデカい傷が付く。何かしらのアクションを起こすと負のリアクションが返って来る。適当にGoサインを出した広告案が発表後に大炎上。冒頭のインタビューでも分かるが主人公はアートについても美術館についても何も分かってない。そもそも関心がない。別れた妻の元で暮らす娘たちのお迎えも忘れる。娘たちに『ザ・スクエア』の展示を見せ中に入らせるが自分は入らない。俯瞰で撮った階段は四角く、主人公はその四角を回り続ける。善意を振り絞っても時既に遅しで結果は付いて来ない。彼の行いを見つめる者にそれがどう映ってるのかは分からない。

『猿の惑星』や『髑髏島の巨神』でお馴染みな「中の人」俳優テリー・ノタリーの猿人間インスタレーションは最高だった。気不味くなる絶妙な長さ。ノタリーの身体性も凄い。あと主人公の娘が出るチアダンス大会の補助員が良い味出してた。懐メロとしてジャスティスがかかってたのは新鮮。
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