全編にわたって矢継ぎばやにくりだされるブラックユーモアが抜群の切れ味。リベラルな価値観が自家中毒を起こしている様相のみごとなスケッチにも舌を巻く。笑えるものと笑えないものとの絶妙な線引きや、ぎりぎりのところで正しさにかたむいていくも安易には達成されない倫理観も、いやらしいくらいにスマート。とてもよくできている。年相応にだらしない主人公の裸体も虚飾をはぎとられた感があってよかった。
キュレーターへの取材にのぞむにはあまりにも無知なインタビュアーとか、誇張が過ぎてカリカチュアがうまくない箇所もあるし、そもそも、究極的には無根拠でもオッケーな善意や寛容さと、根拠や文脈の構築こそが重要な現代アートとを重ねることには無理があるような気がしないでもない。まあ、そういうこまかいひっかかりはほとんど監督の知性と観察力へのやっかみみたいなものです、はい。ただ、ラストを子どものまなざしにたくすのはズルいと思う。