朝ごはん

ザ・スクエア 思いやりの聖域の朝ごはんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

現代アートを題材とした作品。
主人公の勤める美術館が、いわゆる炎上商法的な動画を製作、YouTubeにアップロードしたことが問題となる。結果、チーフ・キュレーターである主人公は責任をとって辞任するのだが、記者会見では、表現の自由や自己検閲といったことが取り沙汰される。

どこからがアートで、どこからがアートでないのか?その線引きは難しい。例えば、京大のタテカンはアートなのか?とか。論争を呼ぶところだろう。映画に出てくる作品には、すべて元ネタがあるらしいが、本作のタイトルにもなっている「ザ・スクエア」とか、人を信じるか信じないかボタンを押す展示とか、正直鼻で笑いたくなるようなものが多い(この辺りが、監督の皮肉が効いてて、いやらしいと思うのだけど笑)。
しかし、「猿人」の登場で今までの雰囲気が一変し、緊張が張り詰める。かなり長回しで撮影されていたが、異物の介入によって平穏と思われていた日常が崩壊し、人々はなす術を失う。
これも元ネタがあるらしい。このパフォーマンスが仮に現実のものであれば、公共の福祉に反する表現をアートと呼ぶ態度は弾劾されねばならないだろう。よくよく巷で耳にする、「アートって言えば何してもOKなの?」という現代アート批判を、ここでも思い起こす。しかし、映画の中で「再演」されたパフォーマンスは、まさに映画的なやり方で私たちの日常に侵入する。大衆心理の描写も相俟って、基本的にユーモラスな映画なのだが、ものすごく恐怖した瞬間だった。

ペダンティックで傲慢な「アート」への抵抗。但し、それは自己批評を伴うものかもしれない。そしてアート業界に携わる主人公の欺瞞を、最後まで救いの手を差し伸べることなく、容赦なく追求する。美術館で働く身として、個人的にも色々考えさせられる。
貧困、差別、炎上、ディスコミュニケーションなど、現実に山積する様々な問題に対して、映画を含めた表現はいかに対抗し得るのか、改めて思いを巡らす機会となるだろう。
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