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ザ・スクエア 思いやりの聖域のkrhのレビュー・感想・評価

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2時間半、ノンストップでストレスがかかり続け、消化しきれずに観終わったあとジムに駆け込むくらいにはしんどかった。

表面をさらうだけで責任の所在を自分に置こうとしない、あるいは要点を掴みきれずに募る苛つきを湛えたまま、会話や状況が進んで行く。チラシ、発狂する男性、一夜の女性、モンキーマン、子供と、相手をコントロールできないという不条理を、手を替え品を替え提示してくるからたまらない。
仕方なく不条理を引き受けてしまう彼は結局爪が甘い。こういうのは嚥下した者負けで、悪い方向に展開を転がしているのは彼自身だということに気づかない。彼はそもそも「練習」しなきゃうまく立ち回れない人間で、不条理を引き受ける器にない。観ている側は「あ〜あ…」と思うものの、「自業自得」ときっぱりとは切り捨てられないくらいには同情してしまう。見て見ぬ振りをする周りの人間は決して全く正しくないし、正義感をもって問い詰める記者だって他人事だからこそ刺すことができる。なにより、「物事をいいとこ取りして自分の責任にできない」のは観ている自分自身のことでもある。SNS社会…

現代美術あるあるには終始笑ってしまう。人物の衣装はじめキャラクターや振る舞いなど、業界をとりまく人々に対する咀嚼の細かさに感心する。階段に座ってグラスを傾けがち界隈の人々、ちょっと覗いてみてはわからないのと人がいないのとで気まずさにすぐ出て行ってしまう鑑賞者。それが展示の一部と気づかずに処理しちゃう業者。動画の内容は露悪的だけれど、現代美術そのものへの批判というよりは、ああいうアプローチをして「アート」とする姿勢への揶揄と見える。それは「スクエア」自体にも言えることで、あれを優れた作品だと胸を張って言える人がどれだけいるのか…
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