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ザ・スクエア 思いやりの聖域のPAOのレビュー・感想・評価

3.8
芸術業界・クリエイター・上流社会へのアンチテーゼであり風刺。
私は割と芸術好きだしなんだけど…極論言えば「アート」ってつけときゃなんだってアリ、みたいな風潮は確かにある。
以前、有名な現代アートミュージアムで、ネズミのはく製を黄色く塗ってピカチューに仕立てた作品が展示されてて、その横のモニターにはネズミを駆除する動画が流れていた。駆除と言っても業者ではなく、若いちゃらけたアメリカ人が笑いながら捕まえてる映像。
ネズミを殺す動画の横にネズミの死体をピカチューにしたはく製。
果たしてこれはアートなのだろうか…と憤りを感じた。
それに絵描きのノウハウゼロの芸能人が突然下手くそな絵を描きだして「わたし画家です」って言っちゃって挙句には広告代理店にのせられて個展とかやっちゃう時代…
映画の中でも、やれアートだやれパフォーマンスだとして猿男の傍若無人な態度を最初は滑稽そうに見ていた上流社会&クリエイティブな人達。エスカレートしてきても極限になるまで目を伏せて言動できずにいる。
「スクエアは思いやりの聖域」
まさに現代アートミュージアムにありそうな作品そのものだ。
またスクエアってのも、インスタグラムの様だなって。
私ってこんな人なの!見て見て!と、表現する為のスクエアにすぎない。
数m×数mのスクエアの中で誰をどう思いやればいい?本当に思いやれる人間はたぶんそんな場所をわざわざ使ってアクションしないからね。
来る人間は「思いやりの聖域に来た私」見て見て。こんな私素敵でしょ?を発信したいだけなんじゃないかな。
ってすごい捻くれた感想で申し訳ないが…
そういった「?」がつきまとう「エセアート」に対する風刺を込めた映画だったね。
切り口は面白いし、ラストシーンも良い。
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