バナンザ

ザ・スクエア 思いやりの聖域のバナンザのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

「現実に起こっていることに世間は目を当てない」ということを映画で示す。映画でも目を当てなかった。しかし存在している。

気が付いたこと
・日本ではあまりない兼用トイレが登場した
・舞台はスウェーデンであるにもかかわらず、セブンイレブンが登場
・仕事の話し合いの場に赤子を連れてきていた
・劇中照明と劇中音楽が多かった
・会話が英語に切り替わっても話題として挙げられなかった
・雑音、ざわめきや外野の声が多く使われていた
・映画が終了してもすべてが解決していない
・クリスティアンが発した「地獄の野郎ども」はとても的確に表現した言葉である
・場面に映らない景色で何か起こり、場面の人はそれを見ている

映画に登場した二項対立
・芸術性と商業性
・裕福と貧困
・寛容と秩序
・表現の自由と道徳性
・理想(art)と現実
・信頼と裏切り
・信条と行動
・展示と非展示

美術館の管理責任者として働くクリスティアンの無責任さが犇々と伝わる映画
表面上では決して悪いことをしているようには見えないが、言葉・行動に対する責任がないことや社会的弱者に対する等閑視が映画の随所に「見」られる。

シーンの要素として登場しないが存在を感じさせる外野の声や姿なき声を公的な場では「無いもの」としてクリスティアンは捉えていた一方で、私的な場では社会的弱者に善意を示していた。必ずしも善意と受け取られるわけでもなく、矛盾した反応を受け取ることもあった。

「思いやりの領域」がアートとして展示される。この資格の中では誰もが平等の権利と義務を持つと書かれている。映画全体を通じて、理想は現実とは違うことが主張され信条として理想を抱いている人でも現実では残酷であるということを、現実にマヒしている人々に訴えている。
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