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ナチュラルウーマンのTOTのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
3.7
マジックリアリズム的映像が綴るトランスジェンダー女性マリーナの喪失と再生。
マリーナの夢や恋人との日常をありふれたように見せて、やがて訪れる喪失には、彼女が彼女である由縁と、恋人の家族の関係性を強く描出して、悲劇性を増幅させる。
たびたび登場する鏡は、劇中ではトランスジェンダーと自称も他称もされない(別の言葉では呼ばれる)マリーナを、自分が何者であるかを再確認させる装置になり、頼りない幻影やロッカー、愛犬も、何も残されなかった彼女へを前に進ませる一掴みの光明になる。
ロッカーのシーン好きだったな、あんなもんだもの、希望なんて。
彼女が、頻繁に画面の中心に配置される構図について聞かれた監督が「幼い頃からずっと隅に追いやられていたこの人物を、ジャンヌ・モローやブリジット・バルドーのような大女優と同じように、この映画の中心にしたかった」って言っていて、その是非はともかく、意思はとてもいいなと思った。
完成度よりは志が目立ってる気はするけど、何よりマリーナを演じたダニエラ・ヴェガがあってこそ生まれただろう作品におめでとうを言いたい。
エンドロールで、プロデューサーにパブロ・ララインって出てきてちょっと興奮した(監督の前作もプロデュースされてるのね)。
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