mimitakoyaki

ナチュラルウーマンのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
4.0
祝・アカデミー 外国語映画賞受賞!

チリ、サンティアゴが舞台のトランスジェンダーを描いた物語です。

かなり年上のおじさんと付き合っているマリーナは、誕生日を彼と過ごし幸せいっぱいでしたが、その日恋人は急死してしまいます。
愛する恋人を失った悲しみに打ちひしがれる間もなく、トランスジェンダーのマリーナに容赦のない厳しい現実が降りかかります。

警察には疑われて屈辱的な質問や検査をされるし、恋人の家族からは葬儀に来るなと言われ、マリーナの心は鋭い刃物でズタズタに切り裂かれるような痛みや苦しみでいっぱいになるのが、見ていてすごく辛くて胸が痛みました。

マリーナをひとりの女性として偏見なしに接してくれる人も身内にもいて少し救われますが、ありのままの自分を生きようとすると周りがそれを許さない。
トランスジェンダーの苦しみってどんなだろうと思いました。

どんなに心ない言葉を浴びせられ、尊厳が傷つけられても、マリーナは感情を表には出さずにぐっと噛み締めて堪えているのですが、それだけに堰を切ったように感情を露わにするいくつかの場面や静かに流す涙に強く揺さぶられます。
彼女が当たり前に自分でいられることの難しさを痛いほどに突きつけられますが、それでも前を向くマリーナのしなやかな強さがとても美しかったです。

この作品はアカデミー外国語映画賞を受賞しましたが、こうして作品が社会で認知されることによって、このようなトランスジェンダーについて、或いは彼、彼女らを取り巻く社会の実情について知り考えるきっかけになるので、とても大きな意義があったと思います。

日本ではまだまだセクシャルマイノリティを知る機会も少なく、そのため差別や偏見がなくなりません。
つい先日新聞記事で読みましたが、三重県の公的な高校生1万人調査によると、同性愛、両性愛、トランスジェンダーのLGBTや、性自認や性指向がわからない人、女性または男性ではない(あるいは流動的)なXジェンダーを含めるセクシャルマイノリティは全体の1割いたとの事です。
これって10人に1人の割合ですから、もはや数だけで言うとマイノリティでもないくらい、きっと身近にも普通にいるくらいの数字です。
ただ、そういう人達が自分の性が社会から認められない事から、偏見に傷ついたりいじめや差別を受ける事も多いという調査結果が出たという事です。

当然ながら日本にもいろんな性があり、そんな人が必ず身の回りにもいるはずです。
残念ながら性について知る機会もまだまだ少ないので、このように映画を通して知る事ができるのは、とても大切な機会だと思います。

愛する人を突然亡くしたひとりの女性の物語としても、トランスジェンダーの女性の物語としても胸を打たれました。
マリーナを演じた女優 ダニエル・ヴェガは自身も男性から女性のトランスジェンダーであり、体を張った身を削るような演技も素晴らしかったです。

たくさんの人に見て欲しいです。

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