しゅんすけ

ナチュラルウーマンのしゅんすけのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
4.2
「ナチュラルウーマン」

本年度のアカデミー外国語映画賞を制したチリ映画。
いわゆるLGBT映画(映画内で扱っているのはトランスジェンダー)なんですが、短くてとても見やすかった。

体つきは男性でありながらも、心は女性のため、いつも化粧をして昼間はカフェでのバイト、夜はバーでの歌手として生きるマリーナ。ある日、そんな彼女のパートナーで会社経営をしている初老の男性・オルランドが突然この世を去ってしまう。オルランドの弟はまだよき理解者風であるものの、その他の親族は彼女をオカマ呼ばわりし、葬式の参列を認めようとしない。

というここまでのプロットで想像したのは、トム・フォード監督がゲイの男性の自殺を決意した1日の心の彷徨いを描いた大傑作「シングルマン」(2009)。「シングルマン」はトム・フォードが監督なだけあって、デザイン性に優れた映画でもありましたが、「ナチュラルウーマン」もその気がある。まず、画面がずっと左右対称でその真ん中を実際にトランスジェンダーでもあるダニエラ・ウェガが堂々と歩いてみせる。これは、男でも女でもない中間のことを示しているのは台詞がなくても誰が観てもわかるつくり。オルランドが通っていたサウナのロッカーの鍵の番号が「181」と小道具まで左右対称になっているこだわりぶりはすごいなと。

あと、この主人公をダニエラ・ヴェガの表情がころころ変わる。
男性的な強い顔にも見えるし、美しい女性にも見える。
か弱く見えるときもあるけど、心の底には偏見に対する怒りがあって、ゲームセンターのパンチングマシーンを思いっきり殴るシーンが印象的。
そんな変幻自在の彼女を象徴するかのように七色に光るネオンライトが何回か登場する。こういうデザイン性を追って意味を考えるだけで90分はあっという間に過ぎていきました。

ダニエラ・ヴェガはまだ28歳ということですが(自分と同い年かよ)ヌードも辞さない演技はすごかった。一時期はアカデミー賞主演女優賞にノミネートも期待されてたほどだったというのも納得の名演でした。

やっぱりLGBT映画は社会的メッセージ云々というよりも、ラブストーリーとしての純度がぐんと高まるので、僕は大好きです。「ボーイズ・ドント・クライ」「ブロークバック・マウンテン」「シングルマン」「ムーンライト」「君の名前で僕を呼んで」などなどなどのLGBT映画にまた一本傑作が仲間入りしました。おすすめです。