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ナチュラルウーマンのemilyのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
4.2
ウエイトレスをしながらナイトクラブで歌うトランスジェンダーのマリーナは都市の離れた恋人オルランドと一緒に暮らしていた。しかしマリーナの誕生日をお祝いした後、オルランドの様子がおかしくなり、病院に連れていかれたままま亡くなってしまう。しかし父親ほど歳の離れた二人、性犯罪を疑われ、差別にあい、トラブルに巻き込まれていく。


音楽と様々な色彩が切り替えにうまく交差し、何気ない景色にしっかり意味と深みをもたらす。

心情を景色と同化させ、スタイリッシュかつ計算された構図により見事に心情を浮き彫りにしている。
誰もいない助手席からカメラは捉え、言いようのない空虚がしっかり浮き彫りになっている。

音楽、音の切り替え、絶妙な角度で主人公を捉え、空間を巧みに操り、ジリジリと心を擦り削っていく。

愛する人を見送りたい、しかし家族の言うこともわかる。マリーナはゆっくりと状況を捉え力強い表情を見せる。決して怯まない。決して動揺しない。なぜなら何も悪いことはしてないからだ。自分の生き方に誇りを持ってるからだ。 そして女になると決めた時から強く生きていくしかないことを知っているのだ。

一人風を切って歩いていく。カメラは横から捉えどんどん強くなる風に向かっていく。大きな壁、彼女か選んだ人生は見世物にされ、興味本位で見られ、これからも沢山の困難が立ちはだかるだろう。憎んでも恨んでも状況は変わらない。歩いていくしかない。幸い彼女には歌がある。絶対に裏切らない歌声がある。

感情移入できる対象は見つからない。家族側の対応は客観的に見ると残酷だが、そっち側の人が多いのが現実だろう。言い訳して良い人ぶっても、心の中に差別心は根付いている。観客にしっかりとたたきつけ、えぐってくる。彼女の眼力の強さがかかえるものは、私たちがつくったものであることを。。

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