もけ

ナチュラルウーマンのもけのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
3.7
キマイラだと呼ばれても、美しい。

トランスジェンダー女性の「平凡」な日常を淡々と描いた作品。
トランスジェンダー女性である主役のマリーナは、高齢男性のオルランドとつつましくも幸せな日々を送っていたが、オルランドの突然死によってその日常を追い出される。

トランス女性の不幸を描いた作品とも言えそうだが、私はどちらかというと、不当に差別する人たちのある意味滑稽な姿を如実に描いた作品だと感じた。
トランスジェンダーに対する憎悪むき出しの暴言や暴力の描写は、とにかく滑稽だ。
取り憑かれたように暴力を投げつける姿は、醜い。
対して、マリーナは、しゃんとして、強い眼差しを保っている。強く美しい姿が対比されている。
トランスジェンダーや同性愛者を主役に添えた物語は、不幸な死を迎えることも少なくないが、マリーナは圧倒的な逆風に立ち向かって生き延びる。
こうして強くしなやかに生き延びる物語は、LGBTの人に力を与えてくれるだろう。

LGBTの人権が注目される中、トランスジェンダーに関する作品が数多く制作されている。
その中でも、トランスジェンダーの役者によって演じられるものは未だ少ない。
マリーナ演じるダニエラ・ヴェガがトランスジェンダーの役者であることで、私はこれまでシスジェンダー役者がトランスを演じてきた作品よりも満足していてる。
シスジェンダー役者がトランスを演じる時、「異性を演じる」演技力がもてはやされがちだが、演じるべきは異性ではなく、トランスジェンダーである人物であるべきなので、この点についてはかねがね疑問があった。
その点、この作品ではこのことがクリアされているので、より集中してみることができた。
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