踊る猫

ナチュラルウーマンの踊る猫のレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
4.3
心の性と身体の性が異なる、ということはアイデンティティにおいて重大な矛盾を抱えるということを意味する。その生きづらさは相当なものがあるだろう。愛する者の死に直面し、葬儀に出たいと思いつつも変態呼ばわりされて追い出されるマリーナの生きづらさは、しかしこの映画では声高に/センセーショナルに描かれることもなく、さながらホセ・ルイス・ゲリン『シルビアのいる街で』にも似た上品さで(と、いつもながら頓珍漢に書くが)語られる。地味ながら隅々まで配慮が行き届いた、決して「文部省推奨」のような「模範解答」を出すことのない、微妙な居心地の悪さを感じさせながら進む LGBTQ の映画としてこの作品を受け取った。最後の最後、マリーナが放つソプラノ(ですよね?)の歌声は性差を超えた魅力がある。彼女の歌声がもっとスクリーンに反映されていればと惜しまれるところもないでもないのだけれど……?
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