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ミスター・ロンリーのveのレビュー・感想・評価

ミスター・ロンリー(2007年製作の映画)
3.8
誰かになることでしか生きられない人々に共感せずにはいられない。彼らはたまに僕らが脳内で行うことを常態化させただけ。だから、そんな彼らが社会との齟齬によって感じる絶望が他人事とは思えない。

しかし、「生きる」ことについて奇妙な人物たちによる不思議な、それでいて観る者を突き放さない物語を作り上げながら、その帰着が「自分らしく」という何とも安直なものになってしまっているのにかなり不満が残る。それならば、自分らしさとは何かということについて描かなければならない。その後の主人公の行く末を暗示しているにしても、時間を使いすぎているのでは、と思ってしまう。
今作でレオス・カラックスが演者としても抜群の存在感を出しているが、彼の影響を感じさせる映像はとても良い。冒頭のシーンは滑稽でありながら抜群に美しく、心を鷲掴みにさせるものがある。流れる音楽も見事。この辺りは本当に素晴らしいセンスを感じるのだけれど、カラックスが演じるという点から個人とは何かを問う「ホーリー・モーターズ」と比べるとどうしても見劣りしてしまう。だけど、とっても惜しい。信頼できると思える作家だからこそ、傑作が観られることを期待してしまいます。