ヨシイコウタ

素敵なダイナマイトスキャンダルのヨシイコウタのレビュー・感想・評価

3.5
こぢんまりしたとても小さな上映室で、観てきました。まあまあ面白かったです。

一見したところ、ろくでなしだし、何を考えているのやらと思うところもあるけれど、どこか格好良く見えるのは何なんだろう。「死んだ母をダシにして何が悪い」とか言ってみたりしてた(気がする)けど、なんとなく、彼はずっと何が何だかよく分からない濁った混沌のなかにいたんじゃないかと思う。そのなかであっちへ行ったりこっちへ行ったり、ちょっともがいてみたりするから、たまに涙が出るし、図らずとも面白くなるし、なんだかよくわからんおじさんがハーモニカ吹いたりする。成功した者のサクセスストーリーじゃなくて、そういうものに光を当ててくれると、人によってはちょっと楽になったりするから、それはとても嬉しいことだとおもった。

尾野真千子が、美しい。今までべつに注目したこととかなかったけど、すごかった。橋の上で、彼女がひとことこぼすとき、「ああ、そうかあ」と哀しい気持ちになってしまった。とてと魅力的な女優さんなんだなと今になって知りました。

峯田くんもよかった。個人的に映画のなかでいちばんグッときたのは、峯田くんが「負けちゃダメだよ」と声を張ったとき。心臓をどん、と突かれたような、それでもじんわりとあたたかくなるような、とても美しいシーンだった。ほんとうに、ちょっと泣きそうにもなった。