晴れない空の降らない雨

映画 中二病でも恋がしたい Take On Meの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

3.4
 完全にファンムービーなので、テレビシリーズへの思い入れが強くないとキツいと思う。
 『ハルヒ』『クラナド』『たまこま』などほかの京アニ作品ゆかりの地を主人公たちが旅行するので、その意味でもファン向け。自社作品の聖地を紹介するだけあって、背景は撮影処理ふくめ気合い入っていた。作画のほうはテレビと決定的に違うというほどではなかった気がする。背景のモブが動かないのが気になったけど、日常芝居の細やかさとかは流石といったところ。
 レイアウトはときどき面白い。主人公の勇太がビジホで買った指輪を眺めるショットで、手を強調していたように見えた。太めの指をアップにして男らしさを示したのかも。また、女性キャラの手のひらを大げさに使った芝居はいかにも京アニだが、そろそろマンネリかも。
 
 改めて気づいたのはヒロイン六花に赤い下唇があることで、あまり美少女アニメらしくないワンポイントだ。そもそもこのヒロインは、ファンタジックな妄想に逃避しがちな少女であり、ストーリーのなかではファンタジーと現実の対比が前景化されてくるわけだが、高校生でアレだから肝心の現実のほうが現実味皆無である。まぁコメディだから基本的にそれで問題ないのだけど、ちゃんと学年を上がっていくし、なかなかシリアスな展開もある。そこで、この下唇は、最低限の生っぽさを彼女に付与していたのかなぁ、とか。すると本作のOPの昔のアナログアニメみたいな塗りは、逆に、依然として彼女が「空想世界」にいる状態だという意味を込めたのかもしれない。
 もうひとつの特徴は私服の多さで、ストーリー上当たり前ではあるが、キャラクターたちが服を何度も替えるのがこの手のアニメでは新鮮に感じた。六花の下唇と同じく、現実世界の普通の女の子なんですよーってことをアピールしたかったのだろうか。