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大河のうたのfieldのレビュー・感想・評価

大河のうた(1956年製作の映画)
4.0
オプー第二作、より母親の心情がクローズアップされてる。ドゥルガたち登場人物の行末、人数が絞られた分当然と言えば当然か。

なんて人生なんだ。蛍の明滅のように儚い人生、木陰で汽車を見つめ息子の帰り待つだけの生活が及ぼす心身への負担。転居したガンジス川沿いのベナレスで僧侶階級らしく聖なる川と共に生きた優しい父ホリの最期も悲壮だったけど。
田舎暮らしが身に付き田舎よりは都会の街で人が密に暮らす事に慣れなかった母、上階の住民にもそう。叔父の配慮で移った田舎でも人付き合いが出来ず、もう少し上手く生きられたなら楽しみを見つけ長生きしてたかも知れない。
別にと詮索する母に細かく話したがらない年頃の子供も気持ちも分かるな。ベナレスでは近所の子と走り回るもどこかフラットな印象だったオプーが猿のエサ上げでようやく笑顔を取り戻したのも田舎暮らしを彷彿とさせるからかな。しかし子供の方が遥かに適応力がある。理系に才能があり、カルカッタに一人移り印刷業をこなしながら学業に精を出す青年オプー。手紙もほぼ出さず帰省もそこそこ、幻聴を聴くほど心配する母をよそに。
叔父を見て事態を把握し座り込み泣きじゃくるも翌日に葬式も出ず戻る身支度をするオプー、叔父の祈りも受けず出る姿は一人で生きていく決意をしたのだろうな、母の為にも。

胸をはだけて眠り続ける姿に父の最期を重ねたか心配する姿や額を撫で優しく接する母の姿に愛情がよく出てる。母への後ろ髪を引かれながら学業に励む対照的な親子の隔たりがより一層強く感じさせるように思う。母の目の隈も凄かったな。
流れるように進む人生、タイトルも素晴らしい。
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