佐藤哲雄

散り椿の佐藤哲雄のレビュー・感想・評価

散り椿(2018年製作の映画)
4.0
散り椿

岡田准一くん主演とのことで、その一点のみを期待して鑑賞したよ。

私はどれだけ岡田くんのことが気に入っているのだろうか、と我ながら不思議に思う。


この物語は、本当に最後の最後まで観ない限り、その意味を感じ取れないのではないだろうか。

お家のために人の罪を被り、怯む暇も置かずに切腹して果てるが如き決断は、現代人には理解し難い心理ではある。

だが、そこをこそ理解し、そして、男が女のために生き、女も男のために生きた時代を理解するためには、最後まで観なければなるまいな。

否、現代においても、男と女の本質は然程変わってはいないであろう。

自分の愛する妻が死に際に遺した言葉が、他の男を守ってあげて欲しいという主旨であった時、世の男たちは果たしてどう生きてゆくであろうか。

この映画は、それが全てであったように思うよ。


さて、映画自体についてだが、西島秀俊氏は相変わらず現代人口調で淡々と台詞を話すスタイルだったためか、感情が伝わりにくかったように思う。

一方、緒方直人氏はその逆で、古い時代劇風の武者口調が著しく、一人だけ浮いていた点は非常に気になったよ。

岡田くんは、まあ、いつも通りと言ったところだろうかね。
黒田官兵衛のまま、と言ってしまうとキリがないが、まあ、そのようだったよ。

悪人役が似合う奥田瑛二氏は、腹黒い家老役に染まっていた。
これについても、いつも通りと言っておきたい。

岡田くんの妻役である麻生久美子さんという女優さんについて、大変失礼ながら、私は全く存じ上げないのだが、本作における彼女の良妻ぶりは、自然で無理が無く、品があり、それでいて砕けており、抜群の存在感を放っていたように感じ、心底感心したよ。

今後は彼女が出演している映画についても、映画自体には興味が無くとも、彼女目当てで観るだけ観てみたいと思ったよ。

そして、その妹役の黒木華さんという女優さんについても、大変失礼ながら、私は全く存じ上げないのだが、驚いたことに、彼女は非常に不憫な妹を演じているにも関わらず、その不憫さよりも、姉の想いを一身に包み込んで瓜生新兵衛(岡田くん)に付き随う姿には寂しげな陰は微塵もなく、むしろ悦びさえ感じていることがうかがえる、そんな絶妙な演技を見せてくれていたよ。

彼女の他の作品での仕事についても、もう少し目線を向けてみたいと思う。

総じて、良い映画だったよ。
楽しませてもらった。
ありがとう。
佐藤哲雄

佐藤哲雄