《バンクス監督の攻撃的なメッセージ性》
【本格的なスパイ映画へ】
とてもシックでスタイリッシュ。アクションはエンタメ性重視だった00年代のテイストからリアルコンバット志向に。街中のカーチェイスあり、大きなツイストあり、と本格的なスパイ映画に近い。
【今作1番の成功】
特にクリステン・スチュワートの演技がとても良かった。彼女が演じたサビーナのキャラクター設定も素晴らしい。型にはまった"男勝りの女性"に留まらず、純粋かつ真っ直ぐでジェンダーレスなかわいさ。また、戦う姿はカッコ良く、人気アニメの主役のようなキャラクター性。クリステンがイキイキとしていて、見ていて気持ちよかった。応援したくなるキャラクター。
【一方、ジェーン】
ジェーン役のエラ・バリンスカのエリートキャラもサビーナとの対比で良かったが、もう少しサビーナと派手に対立があれば、その後の分かり合う展開も際立ったかなと思う。アニメ的なサビーナといつもテンパってるエレーナに比べるとキャラが薄く感じてしまう。
【バンクス監督のメッセージ性】
制作、脚本、そして女性ボズレー役でもあるエリザベス・バンクス監督からの『女の子、頑張ろう!』という分かりやすいメッセージが全編通してビンビン、バシバシ、力強く伝わって来る。女性というだけで「相応しい事」「相応しくない事」に物事が分かれてしまうという問題提起はしっくり来た。それで生まれたサビーナというジェンダーレスな役柄はやっぱり魅力的。
ただ、監督のメッセージ性が少々攻撃的過ぎる場面も目立つ。「女はいかにダメか」というセリフで怒りを誘い、「男がいかにダメか」で物語を丸く収めようとする姿勢。とにかくネガティブなメッセージでの演出が続くので、ちょっとうんざりしてしまう。
【総括】
前作と比べればシリアス路線。より本格的なスパイアクションも。好きなキャラクターもできた。ただ、一般的なスパイ映画と比べると見劣りしてしまううえに、前作のような派手さやコメディーなど光るものもそんなにない。作品の個性は無くなってしまったという印象。そんな中、唯一目立っていたものは監督の攻撃的なメッセージ性という、ちょっと後味が悪い作品だった。
以下ネタバレ↓
【過激なメッセージ】
パトリック・スチュワートが演じたボズレーを、オリジナルTVシリーズや映画版のビル・マーレイが演じたボズレーと同一人物とした事で、過去作を全て否定するかのような(いつのエンジェルたちも騙されていたかのような)物語になっていたのが、ちょっと気に入らない。
それに輪をかけて、男性だったはずのチャーリーが実は女性だったという展開がラストに。これには作品のメッセージ性も相まって、男性だった役を女性に変えてしまう「侵略」に近いものを感じてしまった。ボズレーにしてもチャリーにしても、今作の展開は「男性の下で働いてられっか!逆襲だ!乗っ取ってやる!」に近いバンクス監督の攻撃的な主張にしか思えなかった。
ただ、バンクス監督は相当エンジェルを演じたかったのか、画面の中ではイキイキと輝いていた。