YUKi

さよなら、僕のマンハッタンのYUKiのレビュー・感想・評価

3.5
マーク・ウェブ監督は
やっぱり恋愛ものや家族愛を
丁寧に描くのが巧いなあ。

「ギフテッド」に比べると
ちょっとシニカルで
ウディ・アレン作品的な‥
と思いつつ観ていたら、
それともまた違う。
たぶん真面目ですね。監督は。

人生の美味しいところだけ
間引きして生きてる、要領の良い
もっと言えばご都合主義な人は
結局ないがしろになり、
人と人との情をぞんざいに扱わず
不器用ながらも懸命な人を
ちゃんと見てくれている作品。

ニューヨークの街って
とにかくクールで大好きだけど、
人種の多様性とか差別問題、
最近では銃問題なんかで
常にザワついているイメージが
この作品の背景にぴったり。

まだ自分自身を見つけられていない
主人公トーマスの成長譚ですが、
その家族とそれにまつわる人間関係が
実はああいうくだりに落ちるとは
思ってもみなかった。

その意外性にかなり驚きましたが
トーマスの“父親”は、
どこかで彼の成長を見守りつつ
そろそろ面倒見てやるか、と
しびれを切らしたんでしょうね。

彼の指南は見事にトーマスを
1歩先に進めましたからね。
ガバガバとウイスキー飲みながら‥とか
格好いいオヤジだった。

この作品で最後に笑顔になるひとは
まぎれもなく心の奥底が優しいんですよね。
ズルいごまかしや裏切り、仕返しなんかを
敢えて選択せず、人に敬意を以って
接してきたひと。

トーマスが知ったことは
けっこうな大事件で、思い返せば
シーンの端々に伏線があるんですが、
わたしはラストの母親の笑顔と涙に
最高のカタルシスを感じました。
YUKi

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