ベルサイユ製麺

さよなら、僕のマンハッタンのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.1
タイトルの雰囲気に何か覚えがあるな、と思ったら、恐らくサニーデイ・サービスの“さよなら!街の恋人たち”という曲名を思い出していたのだな。恐ろしく良い曲なので、無意識にこの映画に対する期待度も高くなっていた気がします。

マンハッタン…と聞いて連想するのは青いDr.とレコード屋さんと、あとキョンキョンがコーヒーをうがい飲みしてる姿くらいでしてな…。まあそもそも、そこが何処であれ特定の土地に憧れとかないですし。だってTSUTAYAないんでしょ?CDショップないんでしょ?ニューヨーク全然駄目じゃん。あ、一風堂はあるらしい…。
それでもウディ…なんとかっていうfuck野郎の撮るニューヨークは、まあ魅力的だった事は有る思う。何が違うのか?PSYCHO野郎特有の美意識なのか?
で、今作のマンハッタンなんですけど、…なんか全然ピンと来ないですね。ごく普通の平均的な都会の街にしか見えない(のは意図するところかもしれない)。『東京ラブストーリー』の“東京”って言うのと大差無いような、記号的な存在で、恐らく、監督と同年代のマンハッタンに住んだことがある人にしか正しくニュアンスが伝わらないと思います。…いやもうハッキリ言うと、そもそもこの作品世界に、自分はなんの共感も覚えられなかった!そこは主人公家族がウェブ姓だったりするから、完全なるマーク・ウェブ監督の自叙伝みたいな話だからに違いないと思い込んでたのだけど、特にそういう記述は見なかったし、…なんなんだこの話。どんな気分にさせたいの?
世界のど真ん中に生まれ育つ事も、経済的な心配が無く上を向いて未来を選べる事も、全てを賭けるべき才能がある事も、この上無く優れたメンターが勝手に近づいてきてくれる事も、物語にでもなりそうなドラマチックな出自を持つ事も、全てが全く想像し得ない世界。神々の遊びである。世の中には例えばコップとストローを見るだけでその関係性に悶え苦しむ事が出来る層がいると言うのに、私がこの作品を見てて考えたのは“キスの時、鼻は邪魔にならないの?”“ズケットってなんで落っこちないの?”ぐらいでしたよ…。自分だけピンと来てないのかな、と思ったんですけど、ロッテントマトでも低評価みたいだし、アメリカ人なら共感出来るって訳でも無いみたい…。
まあ不満を覚えるのはそもそもの勝手な期待値の高さ故でして、作品自体は箱庭的な方向で高い完成度だと思います。俳優、ベテラン勢はもちろんのこと、主演のカラム・ターナーがフレッシュで良かった!こういう面構えの、特殊な内面の人いるいると感心しました。ガールフレンドの女の子は『DOPE!』のディギー役のカーシー・クレモンズですね。相変わらずFresh!正直、この2人を見られるだけでも鑑賞の価値は有ると思います。…なので、当初の予定通りにマイルズ・テラー主演(あんまり得意じゃない!)で、かつ90分超えとかだったら(体感もっと長かった!)、FFボタン2プッシュも辞さない構えでしたな。
凄ーく個人的な感覚なのですが、マーク・ウェブ監督って落語みたいなストーリテリング好きなのかな?オチ付けるの好きですよね…。今作でちょっとネガティヴ判定出てしまいましたが、評価の高い『ギフテッド』がどんな按配なのか、早く鑑賞したいところ。
今作の事はさておき、オススメはサニーデイ・サービス、“さよなら、街の恋人たち!”収録のアルバム『24時』です。ここが個人的にもピークでした。(最近のは聴いてない…)

♪ 虹に追われてどこかへ行きたいんです
ウーラ・ラ・ラ ウーラ・ラ・ラ さよなら♪