安堵霊タラコフスキー

多重障害の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

多重障害(1986年製作の映画)
5.0
フレデリック・ワイズマンの撮るヘレン・ケラー的障害者達って結構見応えありそうという下種的発想で見たわけだけど、思った以上に哲学的な内容で色々考えさせられた(というか色々勝手に考えてしまった)

多重障害と言ってもヘレン・ケラー的人物は最初にチョロっと映っただけで基本的には知的障害者の要素が強めだったけれども、食事風景とかにおいて彼らが目や耳の見えないチンパンジーみたいに思えもして、野性的なり本能的なりには自然に感じられる行動でも人間的に見たときに異常と感じてしまうのが不思議に思え、普通とか異常とかの基準についてつい考えてしまった。

他にも人間として動物として生物として生きることについて思いを巡らしてしまうシーンがいくつもあったが、この作品で映っていた人物らに一種神秘的なものすら覚えたのは奢りだろうか。

余談だが、こういう中々評価しにくい作品について自分はよく星をつけないことにしているけど、そうすると自分があまり好きでない濱口竜介の作品と同列に位置づけるように思えてそれはちょっと違うと思うし、かと言って他の満点作品同様に「死ぬ前に見たい作品500」として扱うのも躊躇われる(この作品を死ぬ前に見たらまた生きたくなる可能性もあるから)ので、今回は例外的にタグを付けない満点作品としたい。