MasaichiYaguchi

伊藤くん A to EのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

伊藤くん A to E(2017年製作の映画)
2.9
柚木麻子さんの同名恋愛小説は、既に今夏テレビドラマ化されて放映されたが、本作はそれを映画化したもの。
キャストはテレビドラマ版を続投する形で、顔は良いが自意識過剰で無神経な「痛男」の伊藤誠二郎役の岡田将生さん、かつて大ヒットしたドラマを手掛けた脚本家だが、今では落ち目で起死回生を狙っている「毒女」の矢崎莉桜役の木村文乃さんのW主演で、同じくドラマ版の総監督・廣木隆一さんが本作も監督している。
この作品では超モンスター級のクズっぷりの伊藤を中心に、ぞんざいに扱われる都合のいい女・智美、自分の殻に閉じこもる自己防衛女・修子、愛されたい女・聡子、鉄壁の処女・実希、外面とは裏腹に毒突いてばかりの莉桜、このA、B、C、D、Eと記号化された5人の女たち夫々の赤裸々なドラマが繰り広げられていくのだが、どのキャラクターも何処か歪で共感出来ない。
諸悪の根源で女たちを振り回す伊藤が“問題児”なのだが、物語の狂言回しを担う莉桜も伊藤に負けず劣らず、マッチポンプ的に女たちの騒動に拍車を掛けている。
この物語の中で比較的まともなのが「クズケン」呼ばわりされている若手脚本家の久住健太郎なのだが、彼もこの騒動に巻き込まれて痛手を負うことになる。
ただ不思議とこの伊藤という厄災男と係わって振り回されながらも、「毒を以って毒を制す」の如く彼女たちは悩みやトラウマから解放され、新たな道を歩んでいく。
伊藤の持つ極端に偏った考え方や5人の女性が持つ歪さは男女を問わず、誰しも心の何処かにあるような気がする。
この全く共感出来ないキャラクターたちによる恋愛ミステリーは、我々が心の隅にある暗部を照らす鏡のような作品だと思う。