福本敏弘

隠された時間の福本敏弘のレビュー・感想・評価

隠された時間(2016年製作の映画)
4.2

「君の名は」にも匹敵する、少年と少女との、ファンタジックピュラブストーリー

母親が他界し、義父と共に離島に移り住むことになった少女スリン(シン・ウンス)。
家にも新しい学校にもなじめずにいる中、ソンミンという少年と出会う。
自分と同じように親のいない彼と心を通わせ、次第にスリンはソンミンに好意を抱くようになる。
ある日、ソンミンたちと立入禁止区域内にある洞窟に足を踏み入れ、不思議な光る石を見つける。洞窟にヘアピンを落としたことに気付き取りに戻ったスリンが穴の外に出てみると…
割れた石が残され、3人の少年が行方不明になっていた。
誘拐事件として捜査が始まるが、スリンの前にソンミンを名乗る青年(カン・ドンウォン)が現れる。
彼は時間が止まった世界に足を踏み入れ、自分だけが歳を重ねて来たという。
警察は彼を誘拐犯と疑いマークし始める。
青年がソンミンだと信じるスリンとの逃避行が始まり…
果たして真実は、どこにあるのか。

数日で大人になってしまった少年と彼に恋心を抱く少女の切ないラブストーリー。
自分以外の時間が止まってしまうパラレルワールドという荒唐無稽な設定を大真面目に見せる感動のファンタジーだった。

初の長編映画らしい若手監督だが、これが見事に「映画になっていた」。
「映画になる」とは、自分の場合、カメラアングルやカット割りが、ありきたりではなく、こだわって撮っているかどうかが基準になる。
テレビドラマなら普通にこう撮る。という予定調和ではないところを「映画になっている」と感じるのだ。
この映画も見事だった。
ここでわざわざこのロングショットを挟むか!というこだわりが随所に見られ、それだけで至福の映画体験だと思えるのである。
今、韓国映画には明らかに「映画」を意識して撮っている作品が多々見受けられる。
それに対して日本映画はどうか?
残念ながら、テレビドラマと大差のない、こだわりのない映画がほとんどなのである。
これは国策として優れた映画監督を育てている韓国と、全く国が無関心の日本との差である。このままだと、この歴然とした「差」が取り返しのつかない「差」になってしまうのは明らかである。
これが今日観た2本の作品の明らかな「差」だった。

そうそう、少女スリン役の新人女優シンウンスが超絶美少女で、大注目なのも付け加えておこう。
福本敏弘

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